『GO TO にっぽん! ~コロナ禍が明けたら一番に見たい風景~』第23弾 「清々しい風と山と人と」(中澤朋代)

北アルプスの麓に暮らし、四季折々に長野側と岐阜川の山越えをする日々。今年は念願の学生との実習が叶い、ゼロカーボンに取り組み自転車の聖地といわれる乗鞍岳へ向かう。Eバイクで舗装路を標高2700mの畳平まで登り下った。樹林帯を抜け、山小屋のご主人に手を振った先からは、森林限界が近づき氷河地形が一望できる。

ずっと遠くには、人の作った松本の街。吹き抜ける風は山肌を撫で、それに乗って鷹たちが暖かい地域へ渡っていく。広がる大地に這いつくばる低木林にはホシガラスが、短い夏を慌てるように、いそいそとハイマツの実をついばんでいる。飛騨側を下り始めると、色とりどりの火山湖が見え、大地の動きを思わせる壮大な景色に包まれた。

休憩時に、地元出身の学生たちが「景色が綺麗すぎて、がんばった甲斐があった」とつぶやく。最高のコンディションは、パンデミックで始まった彼らの学生生活へのご褒美としか思えない。

 

コロナ禍で、自然観光はさらに人気になった。自然は天候に大きく左右されるため気は抜けなくて(今回も催行をとことん迷った)、出会えた絶景は奇跡だった。実際、前後の日程は乗鞍スカイラインが強風のため止まり、数日後には2年がかりで完成した工事個所が全て崩壊してしまい、閉鎖に。次はここをいつ走れるのか分からない。でも、この自然の猛威を知っている地元の人々は粛々と自然に従い、再び、道を直す計画を始めるのだろうし、私たちも憧れを持ちながら、いつか行けるその日を再び待ち続ける。

天高く清々しい風が吹く秋。里では3年ぶりにお祭りのお囃子が聞こえてくる。お祭り、稲作といえば、来たる10月9日にエコセンラジオにて、日本やアジアに広がる棚田の魅力を、美しい写真とともに語り合います。こちらも良い風が吹きそう、乞うご期待。

【エコセン共同代表理事 / 松本大学准教授 中澤朋代】

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