『GO TO にっぽん! ~コロナ禍が明けたら一番に見たい風景~』第30弾 「チカイナカ」暮らしのススメ(吉田直哉)

NPO法人丹沢自然学校理事、エコセンでは監事の吉田直哉と申します。はじめまして。
コロナ禍でリモートワークが定着し、憧れの田舎暮らしを始めたい。でも都会の便利さや刺激は捨てがたい…今日はそんな欲張りな方向けに「チカイナカ暮らしのススメ」というお話を書きます。

私は人と生き物のつながりのある暮らしに憧れ、14年前に丹沢山麓・上秦野に移住しました。
秦野市は神奈川県西部、人口16万人で、小田急の駅が4つもある立派な「都会」です。一方で、我が家の周りは茶畑と雑木林と牧場…その先に丹沢表尾根がそびえる、まぎれもない「田舎」。
こういう都市近郊の農村を「チカイナカ」と言うのだそうですね。
例えば神奈川県周辺でも、駅近なのに田畑や雑木林に農家が点在する光景は、海老名でも町田でも、新横浜ですら電車から見えます。どうしてそこは開発されないのでしょうか。
それは、その場所が「市街化調整区域」で、農地や山林に家を建てることができないからです。
開発の制約が多いので、調整区域の売り・貸し物件はとても少ないですが、運よく家か土地が手に入れば、「いいとこどり」のチカイナカ暮らしが待っていますよ。

 
私は週末は家横に借りた畑で土いじり、鶏を飼って卵を産ませ、自家採取のはちみつをパンのお供に。駅まで車で10分、1日400円コインPに停めて、座れる電車で横浜1時間、新宿1時間15分、便利です!
一方で、開発分譲地とは違い、古くからの住民のつながりが根を張る地域なので、コミュ力も試されました。子どものころからちゃん付けで呼び合うおじさま方に混じって、組の寄り合いやお祭りや自治会BBQ…お楽しみというよりは修行に近い?
そんな田舎暮らし初心者がなじめたのは、子どもの存在が大きかった。セットで親も顔を覚えてもらえるし、PTAつながりでママパパ友も広がります。廃校の一歩手前だった小学校に4人も入れたのですから、胸張ってよいでしょう。田舎暮らしは定年後なんて言わず、現役の時に、できれば子どもを作る前に飛び込みませんか。
小学校が廃校の危機を免れたのも、チカイナカのおかげかもしれません。市内唯一の小さな学校(4年前が最少で全校生徒50人強)で、「そんな学校がひとつくらい秦野にあってもいい」と認められ、小規模特認校(学区を超えて市内全域から入学できる)としてよみがえったのです。今では84人に増えた在校生の約半数が地区外から通い、自然の中でのびのびと学校生活を送っています。もっと山間部にあたる山北町や南足柄市の小規模校が次々と統廃合された一方で、近隣の小田原、厚木でも1校ずつ生き残った小規模特認校は都市住民にも人気だと聞きます。
今年はそんな上小学校も設立150周年の節目。私も実行委員の1人として、地域に住む「面白い人」「変な人」を集めて学校でフリーマーケットをやろうとたくらんでいます。僕らよそ者が盛り上げて、もともとの住民や子どもたちにも、上秦野の宝を再発見してもらう機会に。夢が広がる「チカイナカ」の暮らし、あなたも飛び込んでみませんか?

【エコセン世話人 / NPO法人丹沢自然学校 吉田直哉】

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