『GO TO にっぽん! ~コロナ禍が明けたら一番に見たい風景~』第24弾 アイヌを探す旅(山本かおり)

9月下旬に、北海道苫小牧(とまこまい)に旅行しました。テーマは「アイヌ」。

大学時代北海道に住んでいた私は、アイヌが気になりつつ、接点がないまま北海道を去ったのですが、今ではあちこちにアイヌを学ぶ資料館ができました。

まず向かったのは、苫小牧から車で1時間ほどの平取町(びらとりちょう)の「萱野茂 二風谷アイヌ資料館」でした。アイヌ初の国会議員となった萱野茂氏が収集したアイヌ民具などが展示されています。そう言えばちょうど私が大学生の時に、萱野さんが国会議員をされていました。

古びた展示物の中に、サケの皮で作った靴や、着物などがありびっくり。平取町には二風谷(にぶたに)コタンという集落(空間)があり、復元されたチセ(アイヌの家)や体験館などがあり、前述の資料館もその一部になっています。

 

(左:コロポックルの家。萱野さんの資料館の外で)(右:チセ)

コタンの中にある「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」を訪れると、ずいぶん立派で一部の展示物は白老町にできた「ウポポイ」の方に貸し出し中、という表示もありました。

博物館の中には、アイヌの古老が語る物語を聞ける展示があり、歌うようなアイヌ語に耳を傾けました。気になった話がありました。「キツネのチャランケ」という話です。チャランケとは談判のことです。キツネが、アイヌが捕ったサケを一匹だけ失敬したところ、怒ったアイヌがありったけの悪口を言い、木も草もなく小鳥も住めない裸の山、恐ろしい国へわれわれキツネを追放するよう神々に頼んだが、サケというものはアイヌがつくったものではない。神様が、サケを食べる生き物すべてのために用意してくれているものだ。神様がアイヌの言うことだけを聞いて、キツネをアイヌの国から追放してしまうかもしれない。私の言い分を聞いてくれ、と目を潤ませながら談判するキツネのお話です。

さて、白老町にあるウポポイ(民族共生象徴空間)にも行きました。この施設は、コロナ禍の2020年7月にオープンしました。ポロト湖畔に様々な施設が点在しています。メインの国立アイヌ民族博物館の2階に上がると、目の間に穏やかなポロト湖のパノラマが広がりました(冒頭の写真)。館内は、校外学習に来た小学生の団体が目立ちました。お土産ショップに行くと、キツネのチャランケが絵本になった「アイヌとキツネ」を発見。早速購入しました。

旅の最後に「サケのふるさと千歳水族館」を訪れると、やはりここにもサケを捕って暮らしたアイヌの展示がありました。水族館の外では、アイヌの衣装を着た人たちがいて、地元の小学生の団体向けにサケを捕らえて皮を剥ぐ体験プログラムを実施していました。(千歳アイヌ文化伝承保存会と水族館が提供するプログラム)

千歳水族館では、館内から実際のちとせ川を覗くことができ、川を泳ぐサケを観察できました。流れていく枝や葉っぱも見ることができ、とてもリアルでした。

 

(左:実際のちとせ川の魚たち)(右:橋からの景色。この下に展示窓がある)

北海道の大自然の中で、悠々と暮らしていたアイヌの人々の歴史に触れた旅でした。

【エコセン事務局スタッフ / ゆいツール開発工房代表 山本かおり】

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