『これが日本の自然体験~エコセン世話人が独断で選ぶ日本の自然エリアと体験~』第10弾(吉田直哉 )

『瀬戸内の旅』

丹沢自然学校理事/エコセン監事の吉田直哉と申します。
外国人にも教えたいおすすめの旅の目的地、ということで、瀬戸内の旅の話を紹介しようと思います。
でも、その前に。

旅先でどこを目的地にするのが面白そうか。
僕はガイドツアーではなく、ガイドブックやウェブであれこれ調べるのでもなく、
なるべく旅先の宿で聞くようにしています。
若いころならユースホステル、今ならゲストハウス。
その土地の人や旅人同士から聞いた場所を訪ね歩くのが、いちばん面白いから。
妻の実家(広島県呉市)に泊まったその時は、情報源は義父でした。
ここから愛媛に渡るなら、県道の橋で島伝いに行けるんよ。
しまなみ海道や瀬戸大橋じゃないけん。面白いから行ってみんしゃい。
半信半疑で、グーグルマップを開いてみると…。
蒲刈大橋を渡って下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島と、確かに細い県道が橋でつながってる。
ここまではすべて呉市内、でもそこから小さな瀬戸の橋を渡った先の岡村島は、なるほど、愛媛県今治市です。
岡村島から先はローカル航路で今治港へ30分。
これは、楽しそう! 

義父の運転する車で島伝いに愛媛県を目指しました。
戦艦大和を作ったドッグが今も現役で稼働する呉の港湾地帯。
でも郊外から島に渡れば、そこは海に寄り添う瀬戸内の暮らし。
小さな港に漁船や牡蠣筏が並ぶ眺めを見下ろして、狭い県道をくねくねと辿っていきます。


途中の大崎下島では、日本遺産に認定されている御手洗集落に立ち寄りました。古くは北前船の拠点、明治大正の頃まで瀬戸内の風待ち港として栄えたという場所。

石造りの映画館、立派な病院の洋風建築、そして無数にある小さな神社や祠。

この小さな離島の港町がどれだけ栄えたのかを、物語っているようです。
今はひっそりと静かな町並み、でもそこここに花や鉢植えが飾られ、住民のみなさんがこの街を誇りに感じているのが伝わってくるよう。
病院の建物はリノベされてゲストハウスになっていました。

ここで迎える朝はステキだろうなあ。
いまも現役の時計屋さんが営業していて、修理工房で虫眼鏡を覗く職人さんの姿も。

あの時計、直ったらどんな時を刻むのだろう。
港の岸壁のすみに立つ鳥居、神様はここでは海からやってくるのでしょうか。

岡村島からは小さなフェリーで今治港へ。
列車を乗り継ぎ、「最後の寝台特急」サンライズ瀬戸で、旅の余韻をかみしめながら自宅へ。
こんな贅沢な旅、ひとり占めしておくのはもったいないと思い、紹介した次第です。
エコツーリズムに関わる私たち、つい、エコツアー=ガイドの解説を聞きながら歩く少人数ツアー、と思いがち。
でも、地元の人の話を聞いて、自分で発見していく旅こそが楽しい…
ひとりのエコツーリストとして、そんな旅の時間を大事にし、語っていきたいと思います。

【エコセン監事 / NPO法人丹沢自然学校 吉田直哉】


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