世話人へインタビュー!世界遺産編(大堀健司さん)

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が7月に世界遺産に決定したことに関連して、エコセン事務局から世話人・大堀健司さん(石垣島)へインタビューをしました!

Q1 昨年からのコロナ禍、石垣島の観光はどのように変わりましたか?今はどうですか?

大堀:緊急事態宣言中、極端に観光客は減ったのですが、解除後は増加しました。でもコロナ前ほどには回復していません。緊急事態宣言下でも来るような観光客の中には、質の悪い観光客が多く、海岸でBBQをして道具一式放置するなどが見受けられました。また、そんな質の悪い客相手の質の悪いネイチャーツアー(カヌーやシュノーケリング)業者が現れダンピングしています。今は、石垣市とも協力しコロナ後の目指すべき観光を話し合っているところです。

Q2 エコツアーふくみみで始めた「ぬいぐるみツアー」、反響はどうですか?

大堀:変わらずニーズは高いです。受付数限定で申し込みを開始すると数時間で予定数に達してしまいます。コロナ下での応援プログラムとしての使命を終えつつあるので、適正な価格設定に見直したいと考えています。

エコツアーふくみみの「ぬいぐるみツアー」

Q3 石垣島の人は、沖縄北部と西表島が世界遺産になったことを、どのように捉えていますか?

大堀:わからないですね。特に話題に上らないです。そもそも一般の人が自然環境についての話題を普段の生活の中で交わすことはとても少ないです。石垣島のかなりの範囲が国立公園に編入されていることすら知らない人も多いと思います。関心がないというより、多くの人が自分の生活を維持することに精一杯で関心を持つ余裕がないのだと思います。

Q4 今まで、石垣島を拠点として西表島に行く人たちが多かったと思いますが、今後どのように変わると思いますか?

大堀:石垣島を拠点として離島へ行くスタイルは、そうするしかないため変わらないだろうと思っています。西表島がエコツアーの人数制限をかけるとその影響は石垣島にも及んでくると思っています。島ごとではなく八重山地域として連携して観光政策をすべきだと思っています。

Q5 石垣島には観光基本計画があるそうですが、(第2次策定に向け)これからどんな観光を目指したいと大堀さんは考えますか?

大堀:私は、第2次観光基本計画の策定委員に選ばれています。観光事業者だけでなく、島で生活する多くの人が観光というものを意識し、質の高い観光プログラムで質の高い観光客を受け入れるようにしていきたいです。

Q6 質の高い観光プログラムとは、例えばどんなものがありますか?

大堀:それを私たち実際にフィールドへ出ているエコツアー事業者が体現しないといけないと、2020年11月に「化石燃料を使わない3日間のサスティナブルツアー」というものをモデルツアーとして実施しました。石垣島アウトフィッタユニオンに所属する事業者が協力して県内外の参加者10名(視覚障碍とダウン症の参加者含む)にカヌー、コーステアリング、帆掛けサバニ、トレッキング、乗馬、鍾乳洞探検などのアクティビティをしながら一筆書きで石垣島の北部地域を移動しました。これをもとに現在は現実的なプログラム制作を行っています。

Q7 石垣島も移住者が多いと思いますが、地元の人との関係性はいかがですか?(何か注目すべきコラボレーションなどはありますか?)

大堀:地元で生まれ育った人にも移住者にもそれぞれ様々な方がいるので、そろそろ二極でものごとを考える時期は終わりに近づいていると思います。民謡やビーチクリーンなどは特にそれぞれの価値観をまぜこぜにするよい機会になっているような気がします。

Q8 年末からコロナ感染者が急増している沖縄ですが、石垣島の観光事業者は今後の観光についてどのような展望を持っているのでしょうか。(たとえばワ―ケーションの推進など)大堀さんが把握している範囲で教えてください。

大堀:現在、石垣市では第2次観光基本計画を策定中で、私も検討委員として会議に参加しています。それぞれの観光事業者がどのような展望を持っているかは様々でしょう。ホテルや観光バスなどすでに施設や設備を抱えている事業者は、コロナ前と同じ観光が戻って来ることを期待せずにはいられないと思います。私たちのような小さく身軽な事業者は、質の高いプログラムを提供することで単価を上げる観光を望んでいます。石垣市の観光基本計画でも「量から質へ」というキーワードが議論されています。ワーケーションもその一つかと思います。

Q9 エコツアーふくみみは、学校の環境教育も実施されていると思いますが、今力を入れているプログラムはどんなものですか?

大堀:サンゴの学習は人材育成も進み、また要望も多いことから学習プログラムとしてかなり形が整ってきました。現在、SDGsをテーマとしたプログラムを作成中です。昨年「Get The Point」というSDGsゲームの八重山版がクラウドファンディングで作成され各教育委員会に贈呈されました。これを活用した学習プログラムを、中高生と一緒に作り上げたいと思っています。

Q10 9の質問に関連するかもしれませんが、「わくわくサンゴ石垣島」の取り組みについて教えてださい。

大堀:「わくわくサンゴ石垣島」は現在8名のスタッフで運営されています。今年度は石垣市で5校、竹富町で1校を対象にサンゴ礁を学ぶ「サンゴ学習」を実施しました。授業は学校の規模により3~5回で構成され、そのうち1回はフィールドで実際のサンゴやサンゴ礁の生きものに触れる活動を行っています。年々、実施したいという学校が増えていますが、課題はそのための予算です。学校や教育委員会は予算がありませんので、外部から得ることになります。行政や民間企業や個人がそれぞれの立場でサンゴ学習を支えてくれることを希望しています。

●さいごに

お話を伺って、特に「化石燃料を使わない3日間のサスティナブルツアー」という挑戦的な取り組みが気になりました。サスティナブルツアーが特別なものではなく、当たり前のものになることを目指したいですね。
それから、サンゴ学習も地元の子供なら知っていて当たり前、という気がしましたが、意外とそうでもないのでしょうか。観光客向けにもサンゴ学習が広がっていくとよいなあと個人的には思いました。お話、ありがとうございました。

【大堀健司さん:エコツアーふくみみ