「サスティナビリティを主張!」シリーズ 第23弾(中根 忍)

2019年、年明け早々、環境省は「奄美・徳之島・やんばる・西表」を
世界自然遺産登録に向けて申請した。
うまくいけば来年7月には、登録される可能性がある。

私は、その4ヵ所の内、やんばる三村(国頭・東・大宜味)で
エコツーリズム及び自然体験教育の事業を行っている。
その中で国頭村伊部岳のトレッキングについては地元安田区と協定を結び、
「オキナワウラジロガシの巨木コース」は1回につき6名まで。
そして1人200円の環境協力金の寄付を20年行ってきた。
伊部岳周辺は、鳥獣特別保護区に指定されており、県から当研究所へ
「伊部岳自然保全利用協定」と提案されこれを締結し、
上記のルールを守りながら事業を展開している。

しかし、いくら私が事業者として総量規制や動植物捕獲・採取禁止の
ルールを守っていても、一般の自然愛好家や外人ツアー及び他の事業者には、
ルールが浸透しておらず、バス1台から2台で入っていくツアーや
子ども体験活動でドングリの採集などが展開されており、
フィールドの荒廃が進みつつある。
現在、やんばる三村では森林ツーリズムのルール作りやガイド認定制度などを
実施しようとしているが、沖縄県内外の観光事業者や自然愛好家達に
そのルールが伝わり、理解されなければ、フィールドの荒廃は続くであろう。

それは来年「世界自然遺産登録」が実現した場合、
更に深刻な問題に発展するかもしれない。
来年、7月までの時間を考えると早急に三村の作成したルールをもとに
沖縄県としてのルールやガイド認定制度に取り組み、
やんばるの自然を県民や国民全体で守ることを基本において
ツーリズムの展開を図るべきである。
特に観光事業関係者(ガイド・旅行会社・観光協会等)は率先して、
サスティナブル・ツーリズムの促進に努めながら、
広く啓蒙活動にも協力して頂きたい。

伊部岳

また、私の住む国頭村安田区では、イヌ・ネコなどペットの遺棄や
マングースの侵入などでヤンバルクイナやノグチゲラなどの
絶滅危惧種が捕食されていることが社会問題化した時、
地域条例としてネコ・イヌの適正飼養条例、希少動植物の保護条例、
景観保全とウミガメ等の保護に関する海浜条例
そして寄付行為による環境保全基金の創設など、次々と環境条例を整備してきた。
(私も地域活性化委員長及び安田区評議員として関わる)
それは、「ヤンバルクイナの郷」を目指し、自然環境の保護・保全を図ることが
地域活性化に必要だとの意見から行動してきたのだ。

2002年当時、推定700羽程度であったヤンバルクイナが、
2012年には1500~1600羽程度まで回復したことを受けて、
安田区は念願の「ヤンバルクイナの郷」宣言を布告しました。
2013年には国頭村が「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」を設置し、
NPO法人やんばる・地域活性サポートセンターとNPO法人動物たちの病院が
共同で管理・運営し、現在では、地域活性化の拠点となりつつあります。
このように、地域が主体となり自然環境の保護・保全活動を行ってきたが、
私達が目標とした「世界自然遺産」の登録が私たちの地域づくりの活動に、
水を指す状況を招くのであれば皮肉な結果である。
よって観光に関係する人たちや県民や国民の皆様に、
国頭村安田区の取り組みを理解して頂き、やんばるの自然を守りつつ活用して頂きたい。

私の理想はサスティナブル・ツーリズムによるサスティナブルな地域づくりなのである。

林内

【エコセン世話人 / やんばるエコツーリズム研究所 代表 中根忍】
(2019年2月23日配信 メルマガ掲載)