『これが日本の自然体験~エコセン世話人が独断で選ぶ日本の自然エリアと体験~』第14弾(森 高一 )

『蔦温泉』

東北のあちこちを毎年旅している。といっても奥州は広いので、点々と足しげく。
東北の広さと森の深さがいい。
冬の雪の多さも春の生命の復活も、四季折々の変化が大きいのもいい。
北海道の自然とはまた違った空気感がある。
そして何より温泉がいい。

蔦温泉

本格的な暑さがはじまるので、今回はクールな春浅い雪の青森・蔦沼の森のおはなし。
蔦温泉は、降雪量の多さで毎度ニュースに出てくる酸ヶ湯から八甲田山を挟んだ東側、
八戸からの道は通年通じている。
蔦沼はその温泉宿の裏手で、ブナとミズナラの巨木に囲まれたなだらかな地形の中にある。

冬の蔦温泉ミズナラ

冬よりも少し緩んだ早春、雪の中をスノーシューで入る。
無積雪期は沼をめぐる周遊路が
楽しめるが、雪のあるフィールドはどこでも歩いていけるのが魅力だ。
まだ眠っている広葉樹の森は静寂そのもので、音がない。
いずれ雪解けがきて、多くの生命が賑やかにあふれ出す、そのわずか前のひととき。
弱い日差しは雪の白さをやわらかに見せ、湿り気のある風が心地よく、
まるで白い森の中に溶け込んでしまう感覚になる。

蔦温泉ブナ林

東北の森はどこまでも続いているような奥深さがあり、
その先にたくさんの生きものの気配がある。
広い空の下、延々と季節のめぐりは繰り返され、
縄文のころからここには人の営みがあったと思うと、時間間隔も溶けていくようで。
蔦沼だけでなく、東北各地に数多の素敵なスポットがあるのだと思う。
また次回訪ねてみたい「とっておき」がある至福感。
繰り返すが、ここの温泉がいい。

【エコセン共同代表理事 / 森企画 森 高一】


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