『彩とりどり日本紀行 立冬: 11月8日(旧暦9月25日)』第7弾(高木晴光)
「彩とりどり日本紀行」第7弾!
立冬: 11月8日(旧暦9月25日)
「ゆきむし」
道東の仲間から「ゆきむしを見てしまった!」という便りが届くようになりました。
雪虫とは、トドノネオオワタムシといい、アブラムシの一種です。
夏には羽根がない姿で単位生殖し多数が集まってコロニーを作りトドマツなどで暮らしていますが、
秋も深まると羽根を持つ成虫が現れ、交尾して産卵をするために
蝋物質の細い綿毛のような物を身にまといヤナギへと越冬のために移動をします。
しかし、羽根はあるがその飛翔力は極めて貧弱で、山々が色付いた頃の晴れた日に、
ここぞとばかりに一斉に飛び立ちます。
その先兵のような気の早い虫がふわりふわりと風にゆられて飛ぶ様子は
綿雪がちらほら舞うようで、ユキムシと北国では呼ばれ、冬の到来を里人に感じさせます。なので、人々には「あー、いよいよ冬が近づいてきたなあ」と、
風物詩というよりもちょっと嫌われているふしもあります。
なので、「見た」というよりも、「見てしまった!」と、残念な表現がされてしまいます。
それにしても、晴れていても風のある日もあるわけで、
その一斉の飛び立ちは、目的地に向かってイチかバチかの賭け事のような決死移動なのです。
だからこそ、大集団で一斉に飛び立つのは、万にひとつのゴールを目指しているのでしょう。
その集団の中を車で通過すると、フロントガラスは彼らの付着が著しくもなります。
それもまたやっかいな連中とうとんじられてしまいます。
なぜゆえに、そんなめんどくさい生態に彼らはなってしまったのだろうか。
見知らぬ未知なる場所に移動したがるのは、「生き物」としての証(あかし)なんだろうか・・・と、
ぼんやりと我が身の先を想う秋の深まりの午後のひだまり・・・、でした。
※コラムを頂いたのが10月中旬でしたので、道東からの便りはそのころのお話しになります。
【エコセン理事 / 黒松内ぶなの森自然学校代表 高木晴光】
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