『彩とりどり日本紀行 立夏:5月5日(旧歴3月27日)』第19弾(齋藤 理)
「湯治場の夏、里山の春」
僕の暮らす鳴子温泉は、宮城県北部にある温泉地。
硫黄泉、重曹泉など、日本に10種ある泉質のうち7種が湧いている。
そんな豊富な泉質もあって、古くからの湯治場として、内陸部で暮らす農家、
沿岸部で暮らす漁師、都市部の人々、江戸時代には領主、藩主など、
様々な社会階層の人たちが集う場だ。
特に、農家の方々は正月、寒湯治、田植え前、一番草刈り入れ前、丑湯治、夏湯治……など、
気候や田仕事に合わせて、幾度も鳴子に通った。
夏のはじまりとされる「立夏」の頃には、「さなぶり(早苗饗)」湯治に出かけ、
田植えの大仕事を終えた後の心身の疲れを癒し、家族や集落の団結を図った。
忙しい現代社会で、ひとまわり(=1週間)を基本に、ふたまわり、みまわりとした昔ながらの湯治はなかなか難しい。
一方で、「リモートワーク」、「ワーケーション」も活用して、
2泊3日の「現代湯治」を楽しむ人も増えてきている。
雪深い鳴子にとって「立夏」の頃は、里山の芽吹きが楽しめる短い春の一幕。
バッケ、コゴミ、タラッポにシドケ。
仕事の合間にうら山を歩けば、豊かな山の幸に出会うことができる。
春と夏の間、「さなぶり」の頃に、鳴子でゆったりしてみませんか?
【エコセン理事/鳴子温泉もりたびの会理事 齋藤 理】
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