『彩とりどり日本紀行 秋分:9月23日(旧暦8月9日)』第4弾(福井 隆)

写真《伊勢の神宮 満月の日に》

『中秋の名月(9月29日、旧暦8月15日)と秋分の日(9月23日、旧暦8月9日)』

今年の中秋の名月は9月29日ですね。
旧暦で見ると8月15日になるのですが、旧暦では常に、15日が満月に当たっていました。
すなわち、月の運行に沿った暦によって日本の暮らしは明治の初めまで調えられていました。

中でも重要な歴日は、「秋分の日」と「中秋の名月」です。
「秋分の日」は、太陽が真東からのぼって真西へ沈むことから昼夜が同じで、この世とあの世に通じやすい日と考えられたことから、亡くなった人々を偲ぶ日になったそうですね。
このところ、私は旧暦で暮らしを調えてみようと挑戦しています。
その中で、最も大切にしているのは「十五夜と十六夜の満月」です。
いにしえの時代、遥か海の向こうから日本列島に移り住んだ人々は、船に乗り文化と共にやってきました。

天照大神の荒魂を祀る社の穀倉

今でも南九州に残る風習、中秋の名月に「箕の上に里芋」のお供えは、なんと古マレーの島々からの伝承だそうです。
約三万八千年前から継続的に日本列島にやってきた海人族が、収穫の喜びを月に感謝する風習を持ってきたようです。
今でも、インドネシアのスンバ島やサブ島では、タロイモをお供えとして「歌垣」と共に中秋の名月を祝っているそうです。
(「竹の民俗誌」・沖浦和光より)

秋は実りの季節です。
伊勢の神宮では、旧暦9月15日すなわち満月の日、自然の恵みに感謝する神嘗(かんなめ)祭が千年以上続いていました。
そこでは、この年初めて収穫した初穂で調整した御飯・御餅・御酒を神様にお供えし、「ありがとう」の想いを込めるお祭りがおこなわれてきました。
数年前、一度だけ参加させていただきましたが、月明かりの下、神様への言(こと)言(い)いが自然界の音と響き合い、地球に乗りながら宇宙を飛翔する不思議な感覚に襲われました。

今は新暦十月におこなわれるこの祭り、もし古のように満月の下であれば、より自然と共奏する感覚になれたのではと想像しています。

みなさまの地域では、中秋の名月を愛でる習慣は残っていますか。
私は、今年こそ地域の人たちと一緒にお祝いをしようかと画策しています。

 
【エコセン理事 / 東京農工大学大学院客員教授 福井 隆】
 
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