『彩とりどり日本紀行 春分:3月20日(旧歴2月11日)』第16弾(坂元英俊)

今年の冬は少し変だ。
春のような陽が差した。
と思ったら、日本全体に急激な寒波が降り注いでくる。
いつもの雪がやっと来たところもある。
今年は元旦から、能登半島におおきな地震。
地震災害を受けた能登の人々にとっては、本来は真冬だが、雨よ降らないでくれ、
雪よ降らないでくれ、と望んでしまう。
勝手なものだ。しかし、異常気象であることは間違いない。
とはいえ、春分が過ぎると、春はもうそこまでという気分になる。
寒さに耐えていた草木が枯れた橙色の葉っぱや枯草、
木々の枝の先にある赤紫の蕾が、徐々に浅黄色に芽吹いていく。
私が数十年前に住んでいた阿蘇では、野焼きで真っ黒になった草原から、
春一番を競いながら“きすみれ”が顔を出す。
広大な黒の地面に点々と現れた黄色い花びら、
自然界がつくる黒と黄のコントラストによく目を奪われたものだ。

阿蘇草原

春分は、平安時代から使われているという。
農業が中心の古代の生活において、農作物の作付け、
収穫を行う際の時期を見極めるのはとても重要なことだからだ。
この春分を目安に、農作業を本格的に始めることが多くなるという。
それは現代まで続いている暮らしの知恵だ。
未来に向けて豊作を祈願する大切な日。
春分の日が自然をたたえ、生物をいつくしむ日とされているのはこのことからでもわかる。
2024年の春分=太陽の黄経が0度になる日時は、3月20日の12時06分。
太陽が春分点を通過した日が春分の日になる。
春分の日、秋分の日のそれぞれを1年の中でも中日とし、
その前後3日間をあわせた7日間がお彼岸になる。
この日をきっかけに、冬の厳しい寒さや夏の暑さに別れを告げるという節目だ。
春のお彼岸を「春彼岸」、秋のお彼岸を「秋彼岸」と区別して呼ぶ場合もある。

また春分の日やお彼岸の風習が忘れられてしまうことも多くなったが、
ご先祖様への感謝の意味を込め、お墓参りや仏壇の掃除、
お供えなどの供養を行い、それにあわせて自分自身の日頃の行いを振り返り、
見つめ直すのが古くからの習わしになっている。
私事になるが、私の結婚記念日も3月20日。
春の芽吹きになぞらえてこの日にした。

阿蘇草原押戸石山頂上にある巨石は、夏至、冬至、春分の日の日の出を真東から見るように巨石を配置

古代から春分、夏至、秋分、冬至の2至2分は、1年の太陽運行の目安の日でもある。
一年の季節の初めになる春分の日には、太陽が北緯35度22分のラインを真東から昇って真西に沈む。
その際、東から玉前神社(千葉県)、寒川神社(神奈川県)、富士山、
七面山(山梨県)、竹生島(滋賀県)、元伊勢(京都府)、大山(鳥取県)、
出雲大社(島根県)の上を太陽が通り、一直線で結ばれる。
この現象は“ご来光の道”と呼ばれ、
各ポイントはパワースポットとして人気になっているようだ。

長崎県雪浦日の入り

日本は、歴史・伝統・文化・季節の移ろいに満ち満ちており、
地球でもまれな国だと思う。

【エコセン理事/(一社)地域観光研究所 代表 坂元英俊】


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