田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼ [第10回:生活編]

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田歌舎・藤原誉さんからのアドバイスを参考に持続可能な生活への第一歩を!
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【第10回:生活編】
暖かい冬が続いています。
私の住む京都美山町の田歌では10年前くらいまでは里で1m近く、山頂では2mからそれ以上の積雪が当たり前の地域でした。
それが移住から26回目の冬を迎えて始めて、里はおろか山頂にまで全く積雪がないという異常な冬となっています。
過去には20数年のうちに3シーズンほど確かに雪の少ない年がありました。
その冬には積雪で覆い尽くされない笹などの低木や草木が鹿の強度の食害にあい、林床植物の衰退が一気に進みました。
逆に豪雪の年には、早春の谷川に飢え死にした多くの鹿の死骸を見つかります。
一見可哀想ではありますが、食物連鎖を考えたときに、狼が居ない今の日本では寒い冬が動物の数のバランスをとる上で果たしている役割が大きく、雪の下で植物が守られ、春には花を咲かせ、昆虫が集い、花粉が巻かれ、野鳥がそれを食し、種が運ばれ、そうやって日本の自然の豊かさを維持しているのです。
私たちの周囲の森ではこういったバランスが崩れ、林床植物が大きく衰退し、鹿、猪自身にとっても食べ物が枯渇するといった状況で、結果的にかつてより獣自体の数も減少するといった事態にあります。
かつて獣の少なかった地域は、多くの場所で現在増加の一途をたどっていますが、その先に何が待っているのかというのは私たちの周囲の森が示しているような気がします。
今年の暖冬はそういった面でも各地の自然のバランスを崩しかねない事態であるわけで、温暖化は単純に暑い、寒いだけでは無いんだよ!
って日本人全員に知ってもらいたいものです。

(まかないですけど、この日は鹿の解体の体験があった日かな?
同じメニューのお裾分けのお昼ご飯です。)
さて、今回は生活編で
Q.
・毎日家族とどのようなメニューの食事をしていますか?
・魚を食べる頻度はどのくらいですか
・食べるものが季節によって偏ってしまうことはありませんか?
どうやって捌いた肉や季節以外の作物食材を保存していますか。
私たちが常備している調味料ですが、購入するものは、塩、胡椒、醤油、砂糖、みりん、酢、酒、海由来の出汁(昆布、鰹、出汁雑魚:化学調味料配合でないもの)乾燥ハーブ、各種香辛料といった具合ですが、絶対使用しないものとして、味の素などの化学調味料、また化学調味料が配合されるブイヨンやコンソメ
といった肉由来の出汁や、ドレッシンングなどがあります。
また自家製の調味料、香辛料では、味噌、動物由来の出汁、一味、山椒、唐辛子ソース、一部のハーブ類は通年あって、あと、醤油、酢については一部自家製といった感じです。
で、もし調味料もストイックに自家製のみにこだわるとしたならば、塩、胡椒さえ購入すれば、きっとそれ以外は自家製のものだけでやりくりすることは可能かなと思いますし、もちろんそれらでちゃんと美味しいお料理ができます。
だけど、やっぱりいろんな味を飽きずに楽しみたい、様々な料理のバリエーションを楽しみたいという贅沢」な欲求により、海由来のもの、気候的に自家製で得られないものは、意地を張らずに買い物に頼っております。(笑)
ただ食に対する信念のとしては、肥料で言うところの単肥(塩、胡椒、昆布とかの素材そのもの)しか購入しません。
いろんな味を混ぜた出来合いの調味料には、必ず保存料や甘味料、着色料、と味の素的な化学調味料が配合されていて、それらは私たちから料理の知恵と工夫を奪うもの、素材の美味しさを奪うもの、豊かな人(私たち)の味覚を奪うものと信じて疑いません。
この考え方は実は22歳の時(田舎に移住したとき)に決意し、夫婦ともに一切ぶれずに現在も実践しています。
そして、普段食べる食事、食材は旬の食材と収穫物を冷凍保存した肉類やキノコ類、穀物が基本となります。
冬にトマトやキュウリを食べることはありませんし必要性を感じることもありません。
真冬でも、たった今収穫できる、あるいはストックされている食べ物は、大量の肉類(鹿、猪、鴨、鶏)と米、蕎麦などの穀物、そして10種類以上の葉物野菜、10種類以上の根菜、イモ類があります。
鍋料理はいうまでもありませんが、中華でも、ラーメンでもカレーでもそのために必要な材料は揃っています。

(私が20年以上作り続けているかぶら寿司。
かぶらと麹とブリを合わせた北陸地方の郷土食です。もちろんブリはお買い物です。)
正直なところ一番食材が厳しいのは春先ですね。
その頃は葉野菜も董立ちし、ストック野菜も痛んでしまうし、春からのお野菜が育つまでは、正直ちょっとひもじいです。(笑)
だけど、その代わりに、早春には山菜(雑草といっても良い)が一足早く里に溢れてくるのです。
山菜がサラダになり、汁の実になってくれるのです。
確かにクセも強かったりして、ずっとずっとそればっかりじゃ辛い部分もありますが、楽しみながらそれらを工夫して食べているうちにまた新しいお野菜が育ってきてくれます。
そして初夏になると半年ぶりに夏野菜を食べるのです。
それがとても美味しいと私たちの脳は感じてくれるのです。
ちなみに海の魚に関しては、完全に買い物していますよ。
魚を買うことは実は私的には数少ない買い物の楽しみです。
ちょっと市街地に用事があったときには必ずっていいほど、帰りにスーパーに寄って魚を物色します。
また日本海が比較的近いので、漁港の市場に買い出しに行くこともあります。
魚を捌くことも楽しみなので、切り身で買うことはほとんどなくて、つい衝動買いしてデカいブリとかタラとか、アンコウとか買ってしまうよ。
ま、そんな感じです。
週に2回くらいかな、魚を食べるのは。
でも、山村にも海の魚の文化ってあるもので、私の地域ではニシン漬けという身欠きニシンと丸大根を用いた、お野菜と魚を合わせた漬物が郷土食としてあります。
正月前に漬けたものが2ヶ月くらいは持つので、冬の間いつでも樽から取り出して、海の味を楽しむことができるんです。
家族で食べる料理、という質問ですが、基本田歌舎では、お昼のまかないをご馳走にするという決まり事があって、正直それさえ食べていたら栄養十分なのです。
なので、朝は、パン(もちろん自家製)や、ご飯&昨夜の残飯を少しかじる程度。夜ご飯も、夫婦ともに業務から出てくるあまり食材でちゃちゃっと作る、って感じですね。
子供が家にいた頃は上記+子供用のオカズ(肉や魚料理)って感じで一手間増えてましたが・・・。

(下と上は自家製食材のお料理ですね。真ん中はニシン漬け。丸大根、麹、身欠きニシンを合わせた美山の郷土食。
ニシン以外はもちろん自家製。正月の実家のお裾分けのタラコと共に。)
そんな感じですかね。
食料の保存については、山の斜面に横穴を掘って作った大きな室が、野菜、その他保存食の貯蔵庫として活躍します。冷凍保存に関しては、田歌舎は業務でもあるので、コンテナ型の冷凍室があって、生活部門でも大いに活用していますよ。一般家庭でもテーブル型の冷凍庫を持っている方も最近は多いですので、豊かでかつ安心、安全な食材の保存という部分では検討の価値ありかな。
電力に関しては、100%自家発電できていれば、完璧なんだけどね。

(お客様用の冬の前菜プレートです。まかない料理から、お客様のメニューが生まれてきます。)
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