田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼  [第5回:狩猟編 その1]

《田歌舎の猟犬たち。24年前に生まれた初代レオの血を引き継ぐ3代目から5代目の犬たちです。》

 

「田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼」へのご質問にお答えします。
田歌舎・藤原誉さんからのアドバイスを参考に持続可能な生活への第一歩を!

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【第5回:狩猟編】

 

今回はまさに今、シーズン真っ只中の狩猟のお話です。
田歌舎では狩猟は創業2004年以来、業として取り組んでいます。
現在は私を含むスタッフ4名が銃猟の狩猟者で、年間100頭以上の鹿や猪を捕獲し、
周囲の狩猟者の持ち込みの獣も合わせると年間200頭以上の獣を捕獲、解体、精肉
そして販売を行なっています。

こんな日もたまにはあります

 

Q.猟師になるには、また、実際に猟をするにはどうしたらよいですか?

 

行政から狩猟免許、そして銃猟の場合はさらに警察から銃所持許可をそれぞれの試験を受けて合格し得れば誰でも法的にはまず狩猟することを許可される。
そして自分が猟をしようとする都道府県の狩猟者登録申請を毎年猟期までに済ませれば、
許可を得た都道府県で猟をする権利を得ることができる。
狩猟免許の試験の内容は正直なところさほど難しくは無いからそこのハードルは決して高くは無いよ。

 

ただ、銃猟の場合は警察からの所持許可を得る必要があるわけだけど、
その手続きの際には何度も警察に足を運ぶ必要があり、射撃教習や警察による身辺調査などを経てやっと所持許可を得ることができる。
やること自体は難しいことではないけれど、所持する理由が公正、明確でないと受けつけてもらえなかったり、
警察の対応は決して優しいものではないのでちゃんとした覚悟を持っていなければならないね。
警察にしてみたら持つ必要のない人間にはできるだけ持ってもらいたくないと言う基本姿勢があることは分かっておいた方が良いですよ。
後は狩猟者登録を都道府県にするにあたってハンター保険(3000万円以上の保障)に加入する必要があるのだけれど、
罠の保険は個人加入できる保険会社があって、それで良いのだけど、
銃猟の場合は団体加入でしか入れないので、自ずとどこかの猟友会、
またはそれに準ずる団体に所属する必要があるので、自分の所在地の猟友会、
または猟場にしたいところでの猟友会に加入させてもらう必要があります。
これも知り合いの狩猟者や銃砲店(意外とどの都道府県にもありますよ)などで相談することですね。

 

さて、法的なことはさておき、実際に猟をするということは自分が猟をすることが許される猟場を持つということに他ならないんだよね。
一応法律上どんな森でも山でも地主の許可を得て猟をするという体裁にもなっているので、
見知らぬ土地に勝手むやみに猟に入ることはその地域に暮らす狩猟者や住民が良しとしないことも多く、
下手すりゃトラブルにもなりかねない。
「お前どこのもんや、うちらの猟場で勝手なことしてもろたら困るんやけどな!」
とガラの悪そうな厳つい親父に睨みをきかされたりするくらいならまだいい方ね。
ま、他者の猟場にこそこそと隠れて猟に入るなんて、気持ちの良いものでも無いだろうし、
そもそもその地域事情を知らないということ自体が安全管理の問題でもよろしくはないんだ。
続けられるやり方では無いよね。

 

まず頼れる先輩を見つけよう。
自分が暮らすところから猟場として通えそうな範囲の中で、実際に猟をしている方を頼ってみることだね。知り合いの知り合いとか、なんとか探り当ててね。
あとは全国どの地域にも猟友会があるから、自分が暮らす場所の猟友会を頼ってみる、
もしくは自分が猟をしたいなと思うその地域の猟友会を頼ってみるのも一つの方法かな。
ただどんなグループもそこでのルールは割と厳格にあるし、その違いも結構大きかったりもするので、
そのグループが自分にフィットするかどうかは運もあるよね。初めは自分にとって何が良くて何が悪いのかもわからないしね。
まあ、どんなグループに入ったとしてもそこには猟をする機会はあるだろうから、猟師としての第一歩は踏み出せるよ。

 

2年ほど前の狩猟体験参加の母娘と。娘たちが絵本から狩猟に興味を持ったそうです。

Q.狩猟免許や猟銃を含め、猟をするのにどのくらいお金がかかりますか?

 

お金のこと。それぞれの免許を取るのに約10万円だね。
所持する鉄砲は、最初は中古で十分。10万円前後でソコソコのものは手に入るかな。
そして都道府県への毎年の狩猟者登録申請に約3万円。
年間練習含めて200発撃つとしたら、弾代約5万円、射撃場利用料、
弾の譲受許可証とかなんなり小額のランニングコストはかかるけど、そんな感じかな。
初期投資20万円 毎年のランニングコストは1年で10万円くらい見ておけばお釣があるくらいかな。
3年に1回の更新申請というのもあるけど、それは、申請費用自体は小額(数千円)で、
射撃講習を受ける必要のある場合は講習費(1万円くらい)がかかる。
ま、銃を維持するだけで年間押し並べて10万円くらいかかると思っていたらなら間違いないよ。
10万円分の獣肉を獲得できればトントンなのかな?(笑)
ま、趣味とするならそんな感じ。
生業とするには自分の日当も勘定して考えたらそれほど甘い世界ではないよね。

 

ただ、経験年数が経つと、有害鳥獣駆除員、捕獲隊など地域によって呼び名は色々あるようだけど、
とにかく猟期以外に報奨金付きで捕獲許可が下りる制度があるんだ。
この許可が下りるまでの条件やルールもまた地域、行政、各地の猟友会によっても違いがあるんだけど、
基本的には捕獲許可の下りるその地域に暮らしている、
その地域をよく知っている狩猟者に出されるのが原則で、鹿や猪、
あるいは外来のハクビシンやアライグマといった有害獣の捕獲1頭あたり数千円〜数万円
といった報奨金が捕獲に対して支払われるんだ。

 

その資格を得た際にはその地域の獣害で困っているところで捕獲に取り組み、
維持経費を捻出できるくらいになれば趣味と実益が両立できるとも言えるね。
ただ、報奨金目当てで猟を始めようとするのは、俺はあまり好まないな。
今の報奨金制度も昨今の獣害拡大に呼応した一時的な応急的な制度だとも言えなくはなくて、
ずっと続く保証なんて無いし、狩猟者として依存するものでは無いと思っている。
そもそも猟(漁)は「獲って、売る」生業だと思っているので。

 

*ただし、放射能被害地の駆除なんかの特殊な捕獲業務に携わることとかは全く別の意味で意義のある活動でもあるので、
私の話は一般的な部分でのあくまで私個人の思いとして捉えてくださいね。

 

これは7年くらい前かな。この二人はともに独立して今も猟を生業にしてるよ。
今は猪も吊るして皮をむきますが、当時は寝かしてやっていました。

 

Q.まともに捌けるようになるまでどのくらい時間がかかりますか。?

 

動物の解体は皮剥ぎ、大割り、骨抜き、精肉の大きく4つの作業があります。
まず皮剥ぎについては足(主に後ろ足)を吊って足から尻、胴、肩、首へと皮を剥いでいく方法と、
テーブルに寝かして右半身から左半身(その反対ももちろんOK)と剥いでいく方法があります。
田歌舎では鹿、猪は吊って、小動物は寝かして皮剥ぎをしますが、
これまた地域によって人によって色々違いがありますね。
どちらにしても10頭もすればある程度皮剥ぎはソツなく出来るんじゃないかな。
あとはそのスピードをいかにあげるか、だね。
まずは鹿なら11時間以内、猪なら半日くらいで皮剥ぎが出来るようになるのが目標かな。
大割、骨抜きについては骨の形状をしっかり記憶して、肉を不要に傷つけないように訓練しなくてはならないわけだけど、
まあこれも10頭くらい集中して取り組めば大体出来るようになるよ。
精肉に関しては、ロース、外もも、内腿、芯玉、バラ、ウデ、といった部位ごとに、
切り分けてパックするわけだけど、趣味、生活のレベルだと好きなように切り刻めばいいわけなので、さして難しいことではないよね。
ただ、販売するなど業として行う際には、その組織の構造を把握して、不要に肉を傷つけず、
買い手、使い手が望む形を熟知し、的確に無駄なく切り分けられるようになるには、
獣の種類、個体の大きさによっても作業の違いもあったりするので10頭くらいでは習得するのは難しいかな。
ま、ワンシーズン、100頭くらいやればバッチリ習得、免許皆伝だ。
どちらにしても良き師に指導を受けることができればより早く学べるのは間違いないよ。
田歌舎では猟期中、短期研修も引き受けてるので、身近に師がいない方はどうぞ来てください。
毎年何人かが学びに来ているよ。
うちで学んで自分の地域で解体場を立てて生業として始めた人もいるよ。
解体に関しては個人の資格は1日講習会受けて食品衛生責任者の修了書もらうだけだから、
そもそも狩猟者でなくても従事できますしね。

 

鹿の解体体験にて、流行り始めた5、6年前は女性の参加者が圧倒的に多かったよ

 

Q.捌いた後のシカ皮は何かに使っていますか?

 

田歌舎では、まず大切にしたのは頂いた命のお肉を無駄にしないということ。
この10何年もの間、200頭前後の獣たちのお肉を、汚れた箇所などの使えないもの以外を一切無駄にしたことはないんだ。
綺麗に取れる限りは脂のノリの悪いとか小さい個体であってもスネ肉一本も無駄にしない。
まずそこが野生の命を扱う上で課した田歌舎の絶対のルール。
お肉以外の資源。
角に関しては、腐らないから全ての角を捨てることなく確保しておいて、
田歌舎の建物の各所にドアノブだったりタオル掛けだったりで素材として使ったりもするし、箸置きやカトラリーレスト、写真立てなどに加工して田歌舎ではもちろん
地元の観光向けの店舗や実は東京渋谷のヒカリエの中にあるD&Dのショップでも販売しているよ。
皮に関しては製品にしてしまわないとすぐに腐るのが一番の問題点なんだな。
使う予定や売り先が無い中で手間暇、お金をかけて毛皮や革を製造するということは正直なところ現実的では無いんだ。
田歌舎では大きなオス鹿と大きな猪の皮だけをエコセンとリンクしているマタギプロジェクトの革工場に依頼して鞣してもらっている。
その完成した革を素材として、田歌舎で販売したり、革細工の職人さんと連携して製品を作ってもらったりしているよ。
ちなみに小さな個体の革はとても薄いものに仕上がるので使い道はなかなか見つからないんだ。
窓ふきとか実用品として使い道はあるようだけど、あまりにも高価な品物になってしまうものね。
毛皮に関しては、自分で鞣して作りたい人がいたら実費程度で差し上げているよ。
俺自身は、あんまり好きじゃ無いのね。
自分の暮らしやお店の中をケモノケモノさせることが・・・。
厳つい雰囲気は俺の顔だけで十分やろ。(笑)

 

さて、今回はここまで。
次回はもう一回狩猟シリーズを続けるとして、以下の質問に答えようと思っています。
でわでわ~。

 

・ワナ猟は行っていますか?猟銃での猟とどちらが難しいですか?
・獣の肉をおいしく捌くために気を付けることは何ですか?
・猟をするとき、猟犬は何頭くらい必要ですか。
・夏にレストランのメニューで使用するジビエは、どうやって保存していますか?

 

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