田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼  [第4回:農地・獣害対策]

《2009年6月ごろ。通称「真ん中畑」約4畝ほどの家庭菜園的畑》

 

「田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼」へのご質問にお答えします。
田歌舎・藤原誉さんからのアドバイスを参考に持続可能な生活への第一歩を!

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【第4回:農地・獣害対策】

 

さて11月15日より猟期入り、獣に触れる日が多くなって来ました。
とはいえ農閑期へ向けての畑の冬仕度や薪の準備、
農機具のメンテナンスや収納など積雪までにやり残した仕事もまだまだあり、
山と獣だけに向き合う日々は年を越してからになりそうですね。
さて、今回は食料編のいくつかの質問に簡単に答えようと思います。

 

Q.農地を借りるにはどうしたらいいですか?

 

どれほどの規模の農地を借りたいのか、趣味のレベルなのか、
それとも新規就農のレベルなのかによって大きくアプローチが違ってきますが・・・・。

まずは家庭菜園のレベル。
都会郊外にある様なお金を払って場所を借りる貸し農園は別として、
いわゆる田舎に当てのない場所で借りようとした時の話。
まず畑であれ、田んぼであれ、基本農作物を育てるにあたって理想は自分の暮らしのすぐ側なんだよね。
それが叶えられないなら行こうと思えば毎日でもいける距離にあること。
農作物は決して人の予定には合わせてくれないし、
植物たちのタイミングに人間が合わせなくちゃうまく育ってはくれないもの。
だからこそ長く続けるためにも暮らしの近くであることが、大切な要素となるんだ。

実は貸す側の地主さんであっても借りたい人がどんな人柄で、どこに住んでて、どんな思いを持って、
それが実現可能か否か、また、うまくいかなかったとしても挑戦してもらう価値があるのかどうか、
なんて事、言葉にすると重たい様ではあるけれど、感覚的にはそんなことを相手を見て想像しているものなんだよね。
だから農地を借りるにあたって大切なことはまず自分がどんな思いで農地を借りたいのかをちゃんと相手に伝えることができることが大切だと思うな。
暮らしの近くにある休耕地を探してみて、自分のプランが実現可能で借りたいと思える場所をいくつか見つけて、
そしてその周辺の人たちに声をかけてみたりして、誰の農地で地主さんがどんな思いの人かなんてことを教えてもらって、、、。
そんなことをしているうちに出会いが出会いを呼んで素敵な土地に自然と導かれることってあるからね。

まずいいなと思う地域に暮らすちょっと目立った元気な人と出会うことは大切かも。
そして自分の思いに興味、関心、賛同する気持ちを持ってくれる地主さんと出会えることができたら今の時代、
きっと無料で貸してくれるよ。
逆に気持ちなんて関係なく使わない土地があるからと言う理由だけで貸してくれる地主さんも多くいるとは思うけど、
そうして借りる土地は、地主さんの都合で突然断られることもあるし、
下手な農業してたら嫌がられたりするかも、だね。
誰しもはじめから上手くいくばかりではないし、失敗も大切な経験なのだから、
そう言うこと含めて許容してくれる様な地主さんと出会えることがとても大切だよ。

《今年の大豆収穫時。三角畑(通称)約10アール(一反)。この畑は田歌舎の施設からは少しはなれていて目が届かないのでネット+電柵で猿対策を厳重にして被害を防いでいる。奥には1反の田んぼとさらに1反の畑と続く、すべて田歌舎の圃場》

 

新規就農のレベルだと、どこに借りるとか誰に借りると言う以前にどこに暮らす?と言う問題から始まるね。
法人格を持って会社としての農業を企む様なスケールは全く別の話として、生業の一つとして
「家庭菜園以上<専業農家以下」くらいな感じで考えているとしてね。

とにかく家庭菜園以上の農業になったら「暮らしの側に農地があること」はマストだと思うな。
だから実は上記と一緒のことで、まず自分の暮らす家があって、暮らす集落の人に思いを伝えることだね。
もちろん地域の人にもいろんな性格、性質はあるから、自分が話しやすいなと思える人から相談するのがいいよね。
そうすると地域のルールや慣わし的なことも抑えてアドバイスがもらえると思うし、
暮らす地域に適地が無かったとしても周辺の地域でオススメな場所なんかも上手く紹介してくれたりするものだよ。
基本土地というのは地主さんが思いを持って使っている限り、人にはやすやすと貸すことは無いし、
逆に跡継ぎもなく、良い農地であるにも関わらず手に負えず、任せられる担い手を探している人がいたりもすし、
背に腹は代えられず手放そうとしている人もいる。
そういったこと含めてなかなかそこに長く暮らしている人にしか分からない事がたくさんあるものなんだ。
だからその場所の人と繋がる事から始めるのがとっても大切で、それが相思相愛の良い土地探しに繋がるんだよ。

《一番遠い畑 ここでは菜種、そば、小麦などを年代わりで作り、こんにゃく、菊芋、ごぼう、山芋、トウガラシが毎年作られる。猿が関心を持たない野菜限定の畑で鹿、イノシシの防除だけの柵をしている。ネット外周の草による目隠しも工夫。ワイヤーメッシュ柵はイノシシには破壊される弱点を残しているので彼らの大好きな山芋は、ネット側には絶対に植えないなど。作物が見つからない工夫も大事》

 

Q.獣害で育てた作物を取られないようにする方法を教えてください。

 

◎鳥獣害となる鳥獣たち。
鹿、猪、猿、タヌキ、ハクビシン、アライグマ、カラス、群れをなす小鳥たちなどなど
◎獣害から守る術。
電柵、網、フェンス、各種撃退器


《田歌舎施設から一番近い畑。獣が近寄りがたい立地条件と、人の目が届くので、比較的簡易的な防除柵。それでも周りの緑が無くなる今頃(初冬)の頃は鹿に狙われやすい時期なので油断はならない》

 

【基本1】
獣が入ってから防御をするのではなく、獣が入る前から防御をする事が鉄則。
一度、被害にあってからそれを防ぐのは実は至難の技。
ある場所で美味しい思いをした動物たちは事後に人間が様々な防除策をしてみても、
その恐怖以上にその食べ物「美味しい思い」に対する執着の方が勝る場合が圧倒的に多いんだ。
なので作物を取られたくなかったらやられる前にその地域にいる鳥獣に応じた防除策をしておく事がとても重要なんだ。

それを前提にして、一番安価で簡単で効果が高いのは電柵だと断言するよ。
鳥以外の獣全てに絶対的効果があるからね。
ただし、獣の能力やサイズに合わせた設置の工夫は重要な要素なのでその点を以下詳しく説明します。
ちなみ鳥害に関しては、概ねの被害が、防鳥ネットで対応できます。
特殊な作物の特殊な鳥害については色々とあるので今回は敢えて触れません。
獣対策限定としますね。

《一番大きな三角畑の本日(2018.12.11)イノシシ対策が必要なときはネットの外周にさらに背の低い電柵で囲うこともある。ただしイノシシも彼らが好きな作物がないときは、無闇に畑を荒らしに来たりはしないですね》

 

【基本2】
電柵や網は対象となる獣の身体の大きさや跳躍力などの特徴に合わせた設置が必要で、
獣によってアレンジしなくてはならない。

鹿:
150cm程度の支柱に3~4段のコードを子鹿の潜り抜けが出来ない間隔で張り農地を囲うこと。

イノシシ:
高さ1mまでで3~4段のコードを張り、農地を囲うこと。

猿:
2m以上の高さまで電柵またはネットまたはフェンスを張り上部50cmほどはくぐり抜けが出来ない間隔で電柵とする事。
またフェンス周囲に電柱や高木など猿の飛び移りが可能な物を完全に排除する事。

小動物全般:
1mの高さに潜り抜けが難しい間隔で電柵を張り、さらにすぐ内側(10cm以内)に同じ高さのネットを張り、農地を囲うこと。
電柵だけだと潜り抜けを完全に防ぐ事は難しい。
ネットだけだと、食いちぎって穴を開けたり、ネットの下に穴を掘りくぐり抜ける事を避けられない。
2重の防除をする事で電柵の潜り抜けもネットに穴を開けたり
穴を掘って下をくぐり抜けたりすることも電気を喰らわずには不可能にする事ができる。

《これは獣対策でなくて、ビニールハウスの雪対策。この柱たちによって1m以上の雪にハウスが潰されることはない。そして雪の下では育たない小さな葉野菜たちを春まで育んでくれる。もう10年近くこの方法で上手くやれているよ》

 

『まとめ』(きっと一番大切なポイント)
防除したい獣達が上記の全てならば、上記のことを全て網羅した形で畑を囲うことで出来るはずですが、
実際には相当な手間と資材費がかかると思います。
お金がふんだんにある人は数100万円掛けて鉄格子(フェンス)で空まで囲って作物を作れば虫以外の侵入は無いわけだけどね。
一般庶民とすれば、まずは自分の農地の周辺でよく出没する動物に対しての防除柵をできるだけ安価で済むように工夫すれば良いと思います。
むしろ高価であれ、安価であれ、草刈りを怠って電柵がほとんど漏電して効いていないとか、強風で柵が緩んだり、
支柱が折れたりを放って置くといった、その都度のメンテナンスを怠らないことがとても大切ですね。
折角大枚叩いて頑張って作った柵なのに、メンテナンスを少しサボったところに付け込まれて、
「トホホ・・・、(涙)」なんて事の方がよっぽどよくある話なんだからね。
出来た防除柵に過信せず、いかにヒューマンエラーを無くすかが最大のポイントですね。
ま、何度かはこっ酷く獣にやられて悔しい思いをすることも人生においては大切かもしれませんが・・・。(笑)

田歌舎では猿対策までした畑もあれば、イノシシ、シカ対応だけの畑もあるし、
それぞれの畑で作るものも防除の視点を加えて圃場を決めている。
つまり、猿の好きな作物は完ぺきな防除ができている畑でしか作らないということね。
田圃に関しては春?夏はシカ対応の電柵のコード幅ですが、夏?収穫にかけてはイノシシ対応の幅にやり変える。
稲苗の成長期のころは鹿が好んで食べるし、稲穂がつくとイノシシが狙ってくるからですね。
ちなみに合鴨農法の田んぼではカモを狙う小動物対策で電気とネットの2重柵も実際に実践していますよ。

それでも今年もハウスの野菜がなんらか小動物に齧られたり、防鳥ネットで覆うまでにカラスにトマトを狙われたりだとか、
強風の晩に倒れた網からシカが進入して、畑の中を走り回っただとか、毎年なんらか「事件」は起こるよね。
だからこそ出来るだけ多くの経験を積んで色んなことを想定内にする事ができるのが経験であり、
結局それが知恵を育み、技術、実力となっていくんだよね。

 

【基本3】
最後に。
そうは言っても無くならないヒューマンエラー。
なので、被害が出た時の以下の原則を知っておいてくださいね。
全ての獣は3段階を踏まえて、被害が劇的に増大します。

1回目 獣「ん?入れるやん。大丈夫か?悪い事起こらんかな?・・・。ちょっと怖いしもう出よう!(汗)」
2回目 獣「お!今日も入れるやんけ!こりゃええトコ見つけたんちゃうんワシ?? 。ま、そやけど油断は程々にしとかんとな!」
3回目以降
獣「あかん!もうワシ止められんわ。誰かワシを止めれるもんなら止めてみ????!!!!」

1回目で気付いて手抜かりをせずに防除柵を建て直せたならば、
2回目に断念してくれる可能性は割と高い。
2回目の被害の後の防除となると、素直に諦める可能性は五割以下。
一旦諦めたように見えても、何日か後に未練がましく再度出没したりする。
その時にまた柵が緩んでたりしたら最悪ね。
3回目以降の状態に入ると、ほぼ防除不可能。
撃ち殺すか、鉄格子で加工しか手が無い。

ま、基本人間と一緒ですわ。

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