田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼  [第8回:古民家改修編]

(この春から同じ集落に移り住んできた50代の夫婦が現在改修中のお家)

「田舎暮らしの達人!藤原誉さんに聞いてみよう‼」へのご質問にお答えします。
田歌舎・藤原誉さんからのアドバイスを参考に持続可能な生活への第一歩を!
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【第8回:古民家回収編】

Q.古民家を借りましたが、改修が必要です。
どこから手を付けるべきでしょうか。
トイレはどうしていますか?汲み取りを頼んでいますか?

古民家の改修ですね。
借りたお家にどれだけ投資するのかの問題は人それぞれだから、その金額を踏まえてのお話は、お家の状態によって対処も多種多様になってくることもあり極めて難しい話でして・・・。
基本、そのお家を快適に暮らせるお家にするためにはという視点でお話しますね。
まず、古民家を購入、または借りる際に、基礎、土台、そして主要な柱に傾きがない建物を選びたいですね。
築100年を超えるような日本家屋なんかでは多少の歪みがあることが多いですが、それでも、パッと見て違和感を感じない、よく見たら分かる、くらいの歪みの範疇であってほしいです。
ちなみに建物全体に影響している基礎や構造材の傾きは、修正するのはほぼ無理です。
小道具では全く歯が立ちませんし、大掛かりな工事が必要で、ほぼ建て替え同様の資材、資金が必要になりますね。

傾いた柱


(10年来田歌舎がスタッフの寮として借りている日本家屋。
実は柱が南側に大きく傾いていて、改修工事を重ねて何とか傾きをごまかしています。
上の写真では柱、襖が傾いているのが分かりますね。なので、私はこの建物が苦手。
新人スタッフたちの住処として使用しており、長年いるスタッフたちは新たに家を探し、
出て行くようにしています。)

人間の感覚は鈍感なようで敏感な部分もあり、ひどい歪み、傾きの中で暮らしていて、その傾きに慣れるのかというと、決して慣れることが無いんですね。
一番ホッとして過ごしたい場所で、見える景色の違和感が常に潜在意識の中にあるっていう状態は、精神衛生上絶対良く無いと思うし、あまり長い時間過ごしていると健康にすら影響するんじゃないかな。
昔あったマジックハウスってやつ。
どっちが上か下か横か斜めか錯覚するようなやつね。
なんか気持ち悪くなるじゃない、それと同じ違和感が体感の奥底にあり続けるってこと。

まず真っ直ぐに立っているお家を見つけて、次に抑えておく必要があるのは基礎、土台の腐食ですね。
もし腐食が進んでいる部分があれば、その部分を新しい材に挿げ替える必要があります。
建物の北側とか、土手の近くなど湿度の高い場所は要チェックですね。
この工事は一見大変なようで、歪みがない状態で、建物を動かす必要がない場合には意外と簡単な工事です。
ジャッキなどで周辺を保持した上で、その部分だけをすげ替えます。
その工事さえすれば建物の本体自体は新築同様に強固なものに復活します。
もし、土台どころか床を支える根太や床板まで腐食しているようだと、問題は大きいですね。
床下の換気や、水気を侵入させない建物廻りの排水の整備など、原因を見つけて根本的に改善しないと、改修してもまた短い年数で傷んでしまうし、室内の衣類などのカビの発生、増殖などの原因にも繋がります。


(スタッフが秋から借りる予定の日本家屋。屋根にはコケなどの植物がぎっしり。
ですが、中は綺麗に管理されていて、特に改修工事は必要ありません。
ちなみに茅葺き屋根を吹き替えるのも、鉄製の屋根に改修工事するのも概ね300万円程度かかります)

その次は屋根ですね。
まずは屋根裏に上がって、ライトをつけて屋根の構造材(垂木、野地板など)をよく観察することですね。
できれば晴れが続いている時と、逆にしっかり雨が降っている時の2回。
材に大きすぎるシミがあったり、腐りがないかを点検するんだけど、鉄板製やアスファルト系の屋根だと釘穴を大雨の時だけくらいに水が浸透してわずかにシミがあるけど、乾いた状態だと全く腐りもなく健全ってことなど、そうやってよく調べてみて、常に湿気を帯びている、あるいは雨漏りをしているような場所があれば修理が必要ですね。
台風や、倒木なのでの局所の損傷の場合は、その局所だけの修理が安価で良いですね。
トタン、瓦、アスファルト系の屋根だとDIYでも直せる場合が多いですよ。
だけど屋根材の年数劣化(老朽化)が原因の場合は、全体の葺き替えが無難ですね。
全体の葺き替えの際には傷んだ垂木のすげ替えや野地板の張り替えなども同時にすればより安心です。
そしてその際には屋根材自体も変えてしまうこともできます。
茅葺きや瓦の屋根からトタン(鉄製)屋根にとかね。
また吹きさらしの雨を受ける軒先の先端だけが腐食が進んでいるなんてこともありますが、それも、程度には寄りますが、その部分だけ挿げ替えることもできるし、通常の雨にさらされない程度で普段は乾燥しているような状態なら、意外と芯(芯材の場合)はしっかりしていてそのままでもさほど心配ないことも多いです。

基本、木は濡れたり、乾いたりを繰り返しても強いものです。
湿りっぱなし、みたいな状況下になければ何百年でも腐らないものです。
だから逆に腐っている場所というのはよほど悪い状況だと言えます。
屋根ならば建物自体の原因だけど、土台、基礎の場合は周りの環境の問題が大きいので、改修工事の際には湿気を取り除くための周りの環境整備、雨水や湧水などの排水や、植物の撤去など湿気の原因を同時に取り除くことです。
そうして建物の基礎土台、屋根がしっかりすれば、建物自体はもう安心。
まさに「雨風しのげれば」が整ったわけですね。
「雨風しのげれば」十分な野人さんにはこれにて完了ですね。(笑)


(10年来借り続けてきた田歌舎寮。築100年ほどの昔の分教場(寺子屋)です。
見た目は悪いですが、床や内壁を張り替えたりしながら持たせてきましたが、老朽化ひどくこの春にスタッフが引越しをしたことを機会に集落会議で取り壊しが決まりました。
野人さんならまだまだ暮らせるんですけどね)

あとはより快適に暮らせる住環境設備の改修ということになります。
ここからは贅沢な現代人の皆様へのお話で。

で、やっぱり次は水周りですよね。
まず古民家の場合は水道の破損や凍結対策の点検が必須ですね。
まず全ての蛇口を閉じた状態で水道メーターを1~2時間あけてチェックすると、配管全体に漏水がないかを点検できます。全く動いてなければまず現状は安心。
動いているようならば漏水箇所を見つけなければなりません。
可能性の高い順に、まずは壁際などの配管の露出部分(断熱材やヒーターで巻かれている部分も含めて)の点検です。

1.全ての断熱材を剥がす前に、配管付近の湿り気を点検する。
あればその場所にある配管の断熱材を、カッターなどを用いて剥がしてみる。
なければ全ての断熱材を剥がしてみる必要がありますが、床下などの普段目の届かない場所にある露出配管から疑ってかかることが発見の近道。

2.次に疑うのは壁中の配管。これも壁を引き剥がすのは大変なので、まずは建物の土台(2階にも水回りがある場合はその付近の桁や梁なんかも)を隈なく点検してみること。
わずかでも漏水があれば、必ず湿り、濡れがあるはずです。
それを発見できたら間違いなくその上の配管が損傷しているので、いよいよその箇所の壁をできれば内壁(内壁の方があとの修復も容易いので)から剥がします。

3.上記の方法で見つからなければ、いよいよ埋設部分の配管を疑わなくてはならないですね。
基本北海道のような極寒地でなければ20センチ以上の埋設部分が損傷することはまずないので、埋設から地上に立ち上がる部分が一番疑うべき箇所。
もしくは増設(増築)部分なんかでは良くある浅い埋設箇所が無いかを調べてみること。
そういった場所からツルハシで掘り起こしてみて、発見できなければ、流石にDIYでは難しいので業者に頼むべきかな。

水道工事自体は簡単ですよ。ホームセンターでほぼ全ての資材は揃います。
必要な継手や部材を買い揃えて、損傷部分を切り外して交換するだけです。
ノコギリと専用のボンドだけで工事できます。
曲がりがある部分なんかはバーナーなどで炙ってパイプを自在に曲げることもできますが、それが難しい場合にはステンレス製の取り付け金具付きの自在(好きなように曲げられる)配管パイプを必要な長さで購入して使うこともできます。

そうやって水回りの根幹さえ健全にしてしまえれば、あとは新しいシンクを入れたいとか、場所を変えたいというようなことは、考え方はその延長線であり、可能な形を検討すれば良いのです。



(冒頭の写真の室内の改修風景。新しくお風呂、トイレをセルフビルドで改修工事中です。
浄化槽設置など水回り工事は業者に頼んで設備代含めて200万ほど。
市の補助を受けて水回りに関しては概ね賄えるそうです。)

次は排水ですね。
排水はまず排水先の設備の確認から始まります。
公共の排水路に繋ぐのか、浄化槽なのか、あるいは垂れ流し(田舎には良くあります)なのか、ですね。
とにかく現状で排水に何らトラブルがなければ特に触る必要はないと思いますが、もし漏水などトラブルがあるようならば、その箇所ごとに修理をするということになります。
基本、埋設部分の排水はわずかな漏水がある程度ならば、地下に浸透していくので、特に地上に問題は出ないと思います。
なので露出部分での漏水や悪臭、ひどい汚れの有無を調べ、気になれば、その場所の部材の交換をすれば快適にすることができます。
工事の方法は水道と同様で、排水の場合はパイプの直径50ミリ~100ミリが標準で、それらもホームセンターで揃えることができます。
排水の詰まりがある場合は、桝の前後、あるいは露出部分のすぐ側の場合が多いので、桝の場合は桝の汚泥をしっかり掻き出し、配管の中は2m程度の長さの配管掃除のできる専用のブラシを用いて、ゴシゴシと汚れを掻き出し、掃除してみることで、大抵解決できます。
それでも詰まりが解消されない時は手の届かない場所での詰まりの可能性もありますが、その場合にはポンプで大量の水を一気に送り込んで押し流す、という方法もあります。
次に特に垂れ流し(地下浸透)の排水の場合に多いのが、排水された先、建物の外で汚水が溜まるとか、悪臭がするといったこと。
この場合は大抵、排水口のほど側で汚泥が溜まっているとか、排水後の水路の詰まりなどが原因なので、丁寧に取り除き、必要に応じて、排水路を整備し直すことが必要ですね。


(これは上記のお家の元々の五右衛門風呂。これで俺は十分ねんけど、嫁が・・・。よくあるパターンですね。(笑))

排水に関連してトイレのこと。
公共の排水路が整備されている場合には、水洗便所にすることができますが、公共の排水設備につながっていない場合は、合併浄化槽を設置すれば水洗便所にできますが、なければいわゆるボットン便所(+便槽)になります。
ボットン便所止む無しの場合にも、簡易水洗の便器に取り替えることで概ね水洗便所と同じ快適さを得ることができますよ。

ただ、便槽の老朽化や不良による悪臭の問題などは良くあることで、便槽や配管のひび割れなどで補修が難しい場合もあります。
そんな場合は基本的には便槽含めて一式の取替え工事が必要ですが、騙し騙し使うならば、臭気抜きの換気扇(臭突)などのその他の問題をしっかり解決してみることですね。
あとは簡易水洗を設置する際には排泄物+水を便槽に流すことになるので、便槽の汲み取りが頻繁に必要になるという問題点があります。
特に便槽のサイズが小さいと厳しいので、その点にも留意くださいね。
あとは便槽での蚊やウジなどの害虫の発生の点。
これも古民家だと良くあることで虫殺しの薬品を投入することで一旦は抑えられますが、とにかく便槽の蓋などの隙間を完全に防ぐことが必須です。
また便器からの侵入を防ぐためにも簡易水洗に取り替え、あらゆる隙間をコーキングなどで塞ぐことでここも問題を解決することができます。
あと、臭気なんかの問題は換気扇(臭突)の設置や取り替えなどで簡単に解決できることも多いので、まずは近くの業者さんに相談してみることですね。

とにかく排水は周辺の住民との兼ね合いや、地域ごとのルールも違ってありますので、近隣の人で話しやすい人に相談してみることをお勧めします。
とにかく都会同様に快適に、安心に、フリーメンテナスを望むなら合併浄化槽を設置するといいですね。工事費は約100万、維持費は年間8万くらい(自治体によって差がありますが、ボットン便所の汲み取り代より高くつきます)、それを払えるならね。
ただ環境的な視点に立った時、浄化槽から放流される浄化されたはずの水の水質の是非については物議があるところです。
人口密度の低い自然豊かな地域の場合は、垂れ流し(自然浄化)もそれだけで悪とは言い切れず、法的な制約は別にして、独自に微生物分解が進む仕組みを作る事は簡単に出来ますし、法的基準と実際の環境との折り合いとは別な視点で考えるべき部分はありますね。


( これは解体予定の分教場の室内。床は全面、壁も一部張り替えて、まあ、住めるんですけどね。)

最後に、壁や床や建具など。
これは頑張れば全てDIYでできる部分。
環境的な視点に立った際には、出来るだけ新建材を用いず木材または土壁を使うことがベスト。
石膏ボートを始め、断熱材諸々、新建材のほとんどは環境に負荷をかける、循環およびリサイクル不可能な資材ばかり。
田歌舎は、木材は国産限定。そして可能か限り地元材。
新建材は一部の断熱材と屋根の下地のアスファルトルーフィング程度で出来るだけシンプルに建てています。
ボードや壁紙などはむしろ私たちは不潔感を感じます。
それらの呼吸できない材は一切使用しません。
日本の家屋は四季を乗り越えるためにも湿度を吸ったり吐いたりする呼吸がとても大切だと思います。
その呼吸ができるのは、木と土(バイオマス)ですね。

建具はアルミサッシが確かに価格的にも対応年数的にも魅力的です。
ですが、近年は木の建具もレールなど細かい部材の進歩により、使用感も良く、虫の侵入を防ぐ能力も上がり、快適度が増しています。
木の建具の誂え物は高価ではありますが、見た目の安心感含めて価値が見直されている昨今ですね。

見た目といえば、見た目だけの綺麗さを求めて壁材にはボードや壁紙を使いたくなるかもしれません。
ですが、実は汚れは目立ち、落ちにくく、呼吸できない素材で、流れ込む湿気は抜けにくく、また乾燥する場所では室内は異常に乾燥させてしまうといった体にとても良くない上に、快適を維持する耐用年数も極めて短いという代物。
仮設の建物や映画のセットの張りぼてには便利でいいけれど、長年生活するにはお勧めしたくない、というのが私の本音。
壁紙に頼らず、漆喰の壁もDIY出来ますよ。
漆喰は商品で販売されているし、下地の荒板の上に防水紙、ラスを布いてコテで手塗りをする。
ワザとコテの後を残すとか、少々荒く仕上がっても手塗りの壁の空間はとても居心地の良いものですよ。

持続可能と自給自足がテーマのコラムですから新建材については深く掘り下げずに、今回はこれまででご容赦を!

追記
Qトイレはどうしていますか?汲み取りを頼んでいますか?


(これも上記のお家の元々あるボットン便所。使えるじゃん)

田歌舎には浄化槽へ接続された建物と、便槽+簡易水洗の建物があります。
便槽は定期的に汲み取りを依頼していますが、実は汲み取り代などを含めた維持費用は、法律に合致した合併浄化槽に比べて圧倒的に安いですよ。
法定基準の合併浄化槽は年間数回のメンテナンス代、法定検査、汚泥の汲み取り年に1回、など環境を盾にして「銭をたくさん支払う仕組み」で固められています。
この点は国の偏った制度(天下り先の業者にお金が儲かる仕組み)に寄るところがあって、多くの田舎住民は大いに不満を感じています。
私も個人的には独自に浄化システム(杉チップろ過+微生物分解槽の組み合わせ)を自家製で作った上での地下浸透、垂れ流しが人口密度の低い田舎ではベストと考えていますし、一部の建物で実践、実験中です。

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