『GO TO 世話人!』第4弾 田歌舎/京都&若狭町/福井(加集 安行)
【2023年12月2日(土)~4日(月)に、京都美山の田歌舎代表の藤原さんと福井県若狭町の阪野さんを訪ねる旅に参加した、団体会員の方からの報告です。】
田歌舎★狩猟体験
準備をして田歌舎のすぐ目の前の河原に降りていく。犬を向こう岸に放つ。犬が登って行ったのは足場の悪い急斜面で、勢子(人が追い立てる)では無理だろう。危険すぎる。
あとはシカが降りて来そうな場所にハンターを分散して待機する。我々も3つのグループに分かれ、車で少し移動する。ハンターAグループはキャンプ場近くに、ハンターBグループはそれより少し下流に陣取る。最後のハンターCグループは遊撃隊で、様子を見ながら移動してさらに上流や下流を抑えるのだという。
我々は下流側のハンターBに同行し、河原に陣取る。どの犬がどこにいてどういう動きをしているかをGPSシステムで見ながら解説をしてくれる。
犬がシカを追いかけるのは、例えれば子供が大人をおいかけるようなものだ、という。行動スピードが違いすぎるからだ。
しかし、シカの群れはいつもいるエリアからあまり遠くへは移動しないので、犬がしつこいと、それを嫌がって川に降りてくるのだという。流れは匂いを消すので犬の追っ手を避けられるからだ。 ハンターたちは、地形的に、そして経験的に最適な待機場所でそのシカを待ち受けるのだ。
しばらく見ていると、ハンターが、GPSに動きがあったと教えてくれる。稜線をウロウロしていた犬の中の1匹が川のほうへ降りてきたのだ。おじいちゃん犬だ。すると、キャンプ場近くのハンターAから無線が入る。「1頭仕留めた。」 おじいちゃん犬は走るのは遅いが、なぜか上手にシカを追い落とすそうだ。
1頭仕留めたし、これで終わりかな、と思っていると、まだ犬たちが動き回っている。猟は継続のようだ。と、仕事を終えたおじいちゃん犬が我々の近くにやってきて、また山の中へ登って行った。ハンターの説明によると、どうやら他の犬と合流して、またシカを追い落としにかかるらしい。 「シカは、こっちから出てきてこう走るか、あの辺から出てくることが多い」というハンターの言葉通りの場所から、大きなシカが1頭、向こう岸に現れた。川の中を水しぶきを上げながらこちらへ向かって走ってくる。
ハンターは銃を構える。銃声。1発目。当たったのか?動きは止まらない。2発目。まだそのまままっすぐ我々のほうへ走ってくる。3発目。左の肩から血しぶきが空に飛ぶ。川に倒れ込む。ハンターは弾を込め直しまだ首をもたげるシカに近づき、とどめを刺すための最後の一発を構える。しかし撃たない。我々の時間は止まった。誰も動かない。シカだけが苦しそうに頭を振り回す。数秒が過ぎ、シカは完全に動かなくなった。一呼吸おいて、銃の構えが解かれた。
川はまさに血の海だ。すぐに解体が始まった。ハンターが内臓を取り出し、胃袋を我々のところへ持ってきた。素手で触らせてもらう。熱い。あたたかい、ではない。熱いのだ。
仕留めたのはメスの成獣。足を縛って軽トラまで引きずって運ぶ。少しだけ引かせてもらう。重い。
とても効率的な猟だと思った。施設の目の前で猟が始まる。参加者の移動距離・時間も短い。そしてドンピシャの場所にシカが出てくる。
こういう、体験の時のいわゆる簡単な猟と、体験でないときの難しい猟。この組み合わせで、稼ぎとハンターとしてのスキルアップの両立を図っているのだそうだ。
田歌舎★施設説明
敷地内を歩き回ってひとつずつ説明を聞いた。
倒した材木があり、製材機、昇降盤(電気丸ノコ)、カンナ盤などがあり、材料の調達、製材、加工、組み立てまで自分たちでできるようになっている。
裏山は程よい斜度で、歩いて上り下りができるし、水源もある。
野菜も、端境期で少ない時も、ハウスで栽培したり、保存方法を工夫して無理をせずに自給しているとのこと。
あとは、エネルギーだけは自給できていないのでそれに向けた新しい取り組みを始めるそうだ。
建物は、セルフビルドとは思えない出来栄え。すべて誉さんが身に着けてきたスキルの上に成り立っているのだが、やはり元々が器用なのだろう。
そして何よりも、バランス感覚に優れているのだと思う。建物に限らず、すべてにおいて。
コストと仕上がり。古い技術と新しい技術。快適さと不便さ。お客様に見せるためのものと自分たちのスキルアップや満足のためのもの。極端にこれじゃないとだめだ!というこだわりは無く、実利と理想の良いバランス。それでも芯の通った自分たちのスタイルがある。
若狭町★年縞博物館
7万年=45m。世界で稀にみる正確な時代の物差し。縞模様を数えるだけで5年かかったという。
この存在が、世界中の過去のモノの年代推定に与える影響のなんと大きなことか。驚いた。
45mを自分の目で見られる、この体験には、価値があると思う。
テーマを選んで、例えば地震のことだけを追いかけて見る。噴火のことだけ追いかけて見る。という切り口もあってもよいのでは、と思う。
若狭町★タタキ網漁
前夜に、フナの刺身を食べていたのだが、フナの実物を見て、あまりの大きさに驚いた。30㎝ぐらいはあるのではないか。確かに、あれだけの身の大きさなのだから、そんなに小さいわけはないのだが。なぜこの方式なのか、というのを聞くのを忘れた。湖が浅いこと、流れが少ないこと、がこの漁の必須条件か?
小さな船で、すべてを一人でやる漁だ。時代なのだろう、サラリーマン漁師が多いので、漁があるのはほぼ週末だけらしいのだが、その日は月曜日でもやってくれた。
なぜかというと、NHKの取材が行われていたからであった。我々の乗った船は、漁業組合長の船。湖であり風の無い日でほとんど揺れはなく、乗り物に弱い人でも、問題なさそう。組合長は、うまい具合に距離を取りながら船を操る。取材の邪魔にならないように。
小雨が降ったり止んだりしていたが、出漁してしばらくすると、陽が差してきた。湖を取り囲む丘に残る紅葉と、青空、そして水の輝き。船の上から見る眺めは素晴らしかった。
ざっと網を張り、移動しながら竹竿で水面を叩く。やっぱりプロが水面を叩くのは、上手だ。大きな音をたてている。あれ、もう叩くのは終わり?という程度でもう網を上げ始める。数メートルに1匹、という間隔でフナが掛かっている。1匹ずつタモに入れて収穫。
誉さんがフナを買って帰りたいというので、こちらの船を漁の船にくっつけてタモに入れたフナをこちらへもらう。こんな買い物、したのは初めてだ。
この三方湖は、夏の間、菱がはびこって大変らしい。船着き場の横には、菱の実が転がっていた。
2個、拾って持って帰る。自然がこんな形を作るとは、なんと自然とは面白いものよ。
長野県の戸隠は忍者の村としても有名だが、そこで忍者の道具の一つになっていたのがこの菱である。恥ずかしながら、こんなものが本当にあったとは知らなかった。
組合長と阪野さんの会話には、信頼感が感じ取れた。他所から来てこういう事業を行うのはずいぶん大変だったのではないだろうか。
きっと、ひとつひとつ着実に歩をすすめてきたのだろう。
フナを使った缶詰を開発し販売するなど、体験だけではないところにも取り組んでいるのも素晴らしい。
【エコセン団体会員 / 合同会社W-Asobi 加集 安行】
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