『GO TO 世話人!』第3弾 NPO法人千葉自然学校 in大房岬自然公園 その3(中澤 朋代)

小6の山国育ちの娘が「海なら一緒に行く」といい、母子で房総半島に向かいました。以前大房に行ったのは12年ほど前、連れは夫で、東京からの陸路でした。

今回は、世界最大規模の海洋土木工事と紹介される東京湾アクアラインを通り、海底から海上に抜けた景色に歓声!

山の民はどうしても海を見ると叫んでしまいます…。

 

2019年に房総半島先端の常緑広葉樹林帯を、次々とへし折った台風15号の被害。私は大房岬からのSOSを受けて、遠方からの応援(amazonでの物資購入)しかできませんでしたが、この度、現地を訪れて少しほっとしました。

皆さんの手作業によって大房岬の森が回復しつつあり、それは当時の風景とは異なる雰囲気ではあるものの、自然の生命力と春の息吹が感じられるものでした。

 

夕焼けの海が見たいと連れて行ってもらった園地の高台には、20名ほどの宿泊観光客の姿があり、西の水平線に沈む夕日を思い思いに眺めていました。娘は一人海の方に走り、ぼんやり眼下に広がる景色を眺めていました。

その後ろ姿を見ながら、私は元同僚であった神保さんと並び立ち、久しぶりの近況報告をお互いに交わしました。懐かしく、嬉しいひと時でした。

夕日は内陸のそれより赤く、東京湾を貿易で行き来する船は小さく、背後にブロッコリーのような森があり、過去に神保さんと一緒に仕事をした沖縄やんばるの森を思い出させます。

時空を超えた想い、それを引き出すのが海の景色なのかも。

みんなが元気そうで良かった。

 

初日夜からの合流ですが、エコセンの大人たちの行動力と会話に、娘も馴染んできた様子。

翌日神保さんから会ってほしい人がいる、と言うことでエコセンメンバーで訪れた先は、大きくは東京湾の一つ、大房岬から南に広がる大房湾のほぼ中央に位置する沖ノ島でした。

NPO法人たてやま・海辺の鑑定団の竹内さんが、長靴姿で笑顔とともに私たちを迎えてくださいました。

まず、海のお宝鑑定団、と言われて大盛り上がり!(だって、鑑定士がいたから)

お宝を見せていただくとケースから出るわ出るわ、サンゴ、ウミガメの骨、イルカの耳の骨、宝貝、漁具、外国語のついたプラ容器…、竹内さんたちが珍しい自然等のあれこれを長年の活動で拾い集めたものでした。

ここ千葉の沖ノ島は陸続きで、直径1㎞の丸い陸地が浜辺から出っ張っているというユニークな地形です。マイクロプラスチックの混じった砂浜を超えて、海岸伝いに歩いていくと、そこにいる生き物たちもとってもユニーク!

海の生き物は陸の生き物に比べて、足の数、体の色、骨も姿形も、なんて自由なのでしょうか!

岩につくフジツボ、ヒザラガイ、カメの手。ハバノリはそのまま味見したら、ノリそのもの!磯の岩にはアパートのように穴が開いていて、多種の住人?の居住地に。カニは単独で、イソギンチャク、ヒザラガイなどは仲間とコロニーを作るなど寄り添っています。

浅瀬にいるイソギンチャクに指を入れると、ひゅっと触手をすぼめます。持ち上げてもだらりとしたクロナマコ、ウメボシイソギンチャクは照りのあるウメ干し?との疑惑が飛び交い、その命名が楽しい。

(奥に赤いウメ干しが・・・)

ところが、それら生き物たちが住む東京湾はここ10年で急速に磯焼けが進んでいて、2019年の台風15号の陸地の倒木被害が、さらに磯焼けを加速させているそうなのです。

沖ノ島の森の樹高は、以前の半分以下になってしまい、今も倒れたままの姿が残ります。

森と海の関係を調べたNPOの調査では、海藻のアマモが繁茂し、生き物が住める磯であるためには、陸の海岸林からの地下水や空気の流入が重要で、相互の循環により自然環境が保たれることが分かったそうです。

沖ノ島で合流した海の探偵団スタッフは、意外にもヘルメットにチェーンソー姿で、初見は林業士かと思うようないで立ちでした。

海を守る活動として、倒木の始末と浸透性遊歩道を作る作業をされていたのでした。

一度壊れた自然は放っておけば回復に長い年月が必要で、分かって手入れすれば回復が早まり、持続的な自然と人の関係になります。食やレジャーも含め、今を生きる現代人が自然を利用する限り、手入れは必須の取り組み。取るだけ、楽しむだけの搾取や、お金を払い、誰かに守ってもらうだけでは、追いつかないのが現状ではないでしょうか。

一時的な訪問でも、自然を守っていく活動がもっと広がっていけば、人と自然のより良い関係がつくれる。仲間たちと笑い合いながらも、改めて考えました。

最後に環境教育のお話を。
ここ大房岬自然の家のある南房総市は、市の政策でも小中学校への環境学習にとても力を入れていることを神保さんから聞きましたが、後日のニュースでJAPAN OUTDOOR LEADERS AWRD2023に当市に赴任した公立学校教員の篠原準さんが特別賞を受賞されていました。(関連ページはこちら)おめでとうございます!

一方、長野県でも海洋教育が進められています。娘の通う学校も、お隣の学校も。信濃川水系の河川を通して源流部の学校が海辺の学校と交流することもあり、海につながる自然環境を学び、自分たちにできることを考え取り組んでいます。マイクロプラスチックをはじめとした問題に、山の子どもたちも心を痛めている様子です。

海も山も川についても、みんな考えている。お互いにつながり、一緒にがんばるぞー!と元気をいただきました。

 

この度は大房岬自然の家の神保さん、伏谷さん、NPOたてやま・海辺の鑑定団の皆様に、大変お世話になりました。木造古民家の事務所も、おもてなしも大変素敵でした。改めて深く感謝申し上げます。

次の世話人フィールドへの旅が楽しみです。

【エコセン共同代表理事 / 松本大学 中澤 朋代】

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