今、野生動物との接点がない生活を送ってきた人間と動物の距離感は計りづらいものとなっていて、その関係性は、居住地や生活環境、自然観の違いなどによって複雑化し、問題を抱えています。
特に、農林業への被害が多い“獣害”の解決は、農村部での重要課題です。
その課題に立ち向かうために、野生動物との関係性を公正に語ることができる“野生動物インタープリター”の養成を行っています。
狩猟による野生動物の食肉活用”ジビエ”を普及するなど、自然学校や農業などと兼業で猟師を行なう若手たちと一緒にアクションをおこしていきます。
■野生動物と人をつなぐインタープリター
インタープリテーション(以下、IP)は、触れたり感じたりできるものを通してその背後にあるメッセージや価値を伝えるための技術です。野生動物を素材にしたIPでは、ただ単に野生動物を見せる、あるいは存在を感じてもらうだけではなく、その体験を通して背景にあるもの(「生きものと人とのつながり」「人と動物との軋轢」「乱獲問題」「外来種」など)を伝えることが重要です。
この講習会では、動物の生態や魅力そのものだけでなく、人との関係性や背景をも伝え、プログラム作りができるようになるだけでなく、地域の課題解決のために行動し、野生動物と人との共生を目指す “野生動物インタープリター”を育成します。
■講習会に期待できること
1.動物をテーマにしたプログラム企画ができる
直接動物を見ることができなくても楽しめるプログラムや狩猟体験を通じたエコツアーなど、参加者や身近な野生動物と人との関係性、社会背景を踏まえたプログラム企画・実施できるIPのスキルアップを目指します。
2.人と動物をつなぐ野生動物インタープリターになれる
動物との距離が近い日本では、軋轢や乱獲、外来種、傷病鳥獣などの課題が多く存在する一方、野生動物との共存のありかたについて専門的に伝える役割を持ったIPはほとんどいません。アメリカの国立公園や鳥獣の保護エリアでは、野生動物と共生するためのメッセージを伝える教育者は、研究者と別に存在している専門スキルです。
3.地域が求める持続可能で元気な地域づくりのキーマンに
地域の鳥獣害防止や野生動物保護管理計画に住民への啓発は課題のひとつです。行政研究機関へのヒヤリングによると、複雑化する人と野生動物との関係性を正しく捉え伝えるスキルは、地域ぐるみの鳥獣対策と持続可能で元気な地域づくりのために、野生動物保護管理を計画・実施していくうえでも求められていると言います。餌付け行為や耕作放棄など獣害が起こる背景などを市民へ啓発することは、地域ぐるみの獣害対策・野生動物保護管理を計画する第一歩です。
今まで、自然学校やビジターセンターのインタープリターの現職員やそれらを目指す人々、猟師や救護ボランティアなど動物に関わりを持つ人、行政の野生動物保護管理の担当者など様々な人がこの講習会に参加してきました。
インタープリターの技術を持つ人にとっては、スキルを活かして社会課題に関わるチャンスともなります。市民に地域課題の理解を図る手段として、野生動物インタープリターが活用されることを願って研修を企画しています。
■講習会3つのポイント
- 学術的・歴史的背景等様々な側面から野生動物を知る
- 野生動物と人との関係のかたちのひとつである“狩猟”を体験し野生の恵みを活用する(獣肉・獣皮)
- “伝える”ワークショップから、野生動物と人をつなぐ・人と人をつなぐ
■研修の参加対象者
- 地域で野生動物のかかわりをもとうとしている人(もっている人)
- マチで野生動物のかかわりに興味をもっている人(かかわっている人)
- 人と野生動物というテーマを、他者に伝える役割を担いたい人
- 野生動物の恵みを活かす技術を身につけたい人
- 野生に近づきたい人(自然に寄り添った暮らしを志向する人)
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