スペシャルな『旅の話』シリーズ 第17弾!(遠藤 隼)

私が自転車とともに日本を出たのは2012年夏。それから約1年半。
ユーラシア大陸を横断してたどり着いたのは、南の果て南米パタゴニアだった。
旅の初めワクワクしていた東南アジア・中東とは違い、旅の中盤にあたる中央ヨーロッパの旅は平穏そのものだった。
走って、食べて、寝る。その繰り返し、私のアドベンチャー欲が満たされない毎日に終止符を打つべく、南米パタゴニアへ来たのだ。

思ったとおり、パタゴニアの大地は広大だった。
どこまでも続く荒野。
村を出ると次の村にたどり着くのは夕方。
食料の計算をし、地図を確かめ、毎晩テントの中で次の日のことを計画しながら進んでいった。計算を間違うと命取りになる。

ある日、アルゼンチンとチリの最難関と言われる国境を越えた。
数日船を待ち、フィヨルドの海を越えてドロドロの一本道を走り国境へ。
日暮れまでにやっとの思いでたどり着いたのは、アウトドアウェアメーカーpatagoniaのロゴにもなったフィッツロイのあるエル・カラファテだ。
久々の観光地で、泥のように眠り、たくさん食べ、次の街へ備えた。
フィッツロイトレッキングも済ませ、思い残すこともなく街をでた。
自転車とともに走る街からの一本道は、フィッツロイをバックにまさに絵に書いたような景色。いま、世界を旅している!気分は最高潮だ!!
しかし、街を出て数時間後。あることに気がついた。

・・・あれ?食料を持っていない・・・。
フィッツロイへの高揚感か、久々の街でのバカンスの気の緩みか、食料の計算を怠っていた。
まあ、隣町だからすぐ着くだろう。
なんてのんきに地図をみると、その距離250km。
間には村もなにもない・・・。ひたすら続く荒野。
まして、パタゴニアの荒野では日中に台風並みの暴風が吹き始める。
追い風なら問題ないが、向かい風だと身動きがとれなくなるほど。
いつものペースで走ることもできないのだ。
途方に暮れながらも、残りのビスケットなどを確認しながら前進した。
行ける行けると思い聞かせても無情に腹は減ってくる。
完全に腹が減るとハンガーノックといって一気にパワーが落ちることがある。
そうなると身動きがとれなくなって一大事だ。
夕暮れが近づき非常食も尽きてきた・・・。
そんなとき、橋の上から川を見ると、一台の自転車とテントが見えた!
同じく自転車の旅人がいる!!橋を駆け下り近づいて訳を話すと、スイス人の彼は快くパスタを分けてくれた。
川の水で茹でて食べたこのパスタ。もちろんパスタソースなどない。
しかし、美味しかった。そしてなにより、安心した。
これで街までたどり着けるんだ。

自転車旅の面白いところは、この食べ物をゲットしたときの無敵感だ。
パスタ一袋でこれまでの絶望から無敵状態まで気持ちが跳ね上がる。
「もうどこまでも走れるぞ!」と。まだ街についてもいないのに。
まだまだパタゴニアの旅も中盤。だからアドベンチャーな旅はやめられない。

そんな、自転車旅人13人がつづる旅の写真展「目的のない旅展」を2020年10月17日~11月23日に長野県辰野美術館で行います。
自転車旅の魅力満載ですので、ぜひ御覧ください。
https://mokutekinonai.com/

 【エコセン世話人 / サシバの里自然学校校長 遠藤 隼】
(2020年9月14日配信 メルマガ掲載)

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