この季節、郊外を散歩していると黄色い花をつけた2メートルを越える背の高い草を見かけます。都会の空き地だけでなく、河原や荒れ地、道路ぎわなどに群生するセイタカアワダチソウです。
遠目にも、茎のてっぺんにスクランブルエッグのようなあざやかな黄色が泡だったように美しく、よく目立ちます。その花を観賞するために、明治の終わりごろ北アメリカから移入された帰化植物ですが、旺盛な繁殖力で野草化し、あっという間に全国に広まってしまいました。今では日本中に分布しているので、だれでも一度は見たことがあると思います。
このセイタカアワダチソウ、2、30年前に各地でどんどん繁殖し、問題になったことがありました。秋の花粉症の時期とかさなったために、その犯人扱いをされたこともあります。真犯人はブタクサだったのですが、彼らの異常な繁殖力が悪いイメージにつながったのだろうことは容易に想像がつきます。
綿毛のついた種だけでなく、地下茎によっても増えるために、手に負えない雑草と嫌われている地域もあります。おまけに、このセイタカアワダチソウには秘密兵器がありました。根から他の植物の成長をはばむ化学物質を分泌するのです(アレロパシー)。そのため、群生したセイタカアワダチソウの中には他の雑草が入りこめず、空き地を独占する大群落をつくっていくのです。
このままでは日本中がセイタカアワダチソウに占領されてしまうと心配されたころ、異変が起こりました。その後、なぜかセイタカアワダチソウの群落が減ってきたのです。人間の環境開発のせいもありますが、密生しすぎた群落の中で、本来は他の植物を抑えるための化学物質が自分自身に効きはじめたのではないか、ともいわれています。これが本当なら、なんともまぬけで皮肉な話ですね。
かつての河川敷の大群落も、今では在来種のクズやススキにとってかわられている場所が少なくありません。帰化植物の一時的な大繁殖も、在来種との競争を経て一段落し、時間とともに適正な場所や個体数が決まっていく典型的な例なのでしょう。
最近では都内のセイタカアワダチソウもずいぶん姿を消し、地方へ旅行する機会でもないと見られなくなってきました。これもまたちょっと寂しい話ではあります。