スペシャルな『旅の話』シリーズ 第16弾!(佐々木 豊志)

3.11の東日本大震災の津波が押し寄せた東北の海岸線に「みちのく潮風トレイル」と呼ぶロングトレイルがある。環境省が取り組んだ復興事業の一つのプロジェクトだ。昨年2019年6月に全線が開通した。青森県八戸市蕪島から福島県相馬市松川浦まで4県28市町村を貫く全長1025kmに及ぶ道だ。

私がこのプロジェクトに加わったのは、震災直後すでにこの構想が進み6・7割のルートが確定している段階からになる。2015年3月に国連防災世界会議が仙台で開催されたRQ災害教育センターとしてセッションを開いていた時、環境省の担当者がコンタクトを取ってきた。その時にこのプロジェクトの詳細を伺った。実は、これまでに環境省は、アメリカの国立公園とロングトレイルに習い、50年ほど前に東海自然歩道というロングトレイルを設置している。戦後の高度成長の60年代に新幹線や高速道路の建設が進み、モノと人が高速で移動する時代に、あえて歩くことで自然回帰ができる道の普及に取り組んでいたのだった。その後九州自然歩道など国内に数多くの長距離自然歩道の設置をしている。ところがこれらの道は十分に活用されず荒廃しているのが現状だった。これから展開する「みちのく潮風トレイル」がこれらの道の二の舞にならないようにどうすれ良いのか、検討したいということだった。そのために実際にトレイルを歩いて課題を見つけ、持続可能なトレイルの管理運用と活用の体制を構築するための基礎調査が自然学校に舞い込んだのだった。

その時から、みちのく潮風トレイルがこれまでの作りっぱなしならないための体制の構築が始まった。そして環境省・自治体・NPOの三者で運営協議会を立ち上げ、そこで全線の運営を行うというこれまでに例がない体制がスタートした。まさに地域で生きる、地域を活かす新しい運営手段で道を管理する体制だ。

まだ全線が開通して1年あまりだが、これから未来へ向けて歩く道を育て、歩く文化を醸成することが期待される。そのためには、自然と人と地域が共生し、ハイカーを地域の人たちのホスピタリティが支える輪を広げたい。全線を踏破したハイカーも増えている。彼らから予期しない出会いがあったと聴いた。生活圏から離れた高い山や原野ではない、人が住み、生業があり暮らしがある景観に中を歩くのがみちのく潮風トレイルの魅力になる。



▶︎みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンター

【エコセン世話人 / 青森大学観光文化研究センター長 /
NPO法人みちのくトレイルクラブ代表理事 佐々木豊志】
(2020年9月1日配信 メルマガ掲載)