スペシャルな『旅の話』シリーズ 第14弾!(鹿熊勤)

1年の4分の1ほどは国内のあちこちを旅しています。
といっても取材という仕事として。
実態は優雅な休暇とは程遠いタイトな出張ですが、
そんなあわただしい時間の中にも旅の面白さはあります。
そもそも興味深い物事を発掘してきて世間に伝えるのが記者のミッションなので、
行ってみたけど何もありませんでしたと、手ぶらで帰ることは許されないのです。
そのために私が心がけているのは、事前に訪問先について調べること。

 

特に目ではなかなか見えにくい地域の歴史性や文化性について。
といってもネット検索でチョチョイと出て来るような情報は、
じつは仕事の役に立った試しがありません。
私の場合、まずは旺盛に地方を旅した先人の記録をたどります。
たとえば民俗学者・宮本常一の一連の著作や、
作家・司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズ。
必要があれば江戸時代の紀行文や古典にも目を通します。
そして現地では、1時間でもよいので地元の図書館(図書室)に立ち寄ります。
目当ては『町村誌』の閲覧。
文化事業に今より予算が付いた昭和30年代から昭和の終わりにかけ、
各自治体が地元有識者に号令をかけまとめた分厚い郷土史です。

 

歴史、産業、自然、民俗などが一覧できるようになっていて、
今では地元の人すら忘れているようなエピソードも数多く記されていて発見があります。
これらの読前と読後では、土地の見え方そのものが違ってきます。
一言でいうと、はじめて訪ねたのにとても印象深い場所になる。
町村誌は、地域おこし協力隊や自然学校のスタッフとして
地方に深くかかわって活動したいという人にも一読をおすすめします。

 

悲しいことに、どこの町村誌も借り出してみるとページを開いた形跡がほとんどありません。
こんなすばらしい宝物の価値に地元の人自身が気づいていない。
こんなところにも旅人の果たせる大きな役割があるように思います。

 

【エコセン世話人 / 自然系ライター・鹿熊 勤(かくま つとむ)】
(2020年7月20日配信 メルマガ掲載)