スペシャルな『旅の話』シリーズ 第4弾!(橋谷 晃)

もう15年くらいも前、カナダのロッキー山脈を旅していました。
湖から少し登った、気持ちの良い草原に建つ、山小屋に泊まっていた時のこと。

 

山小屋では、カナダ各地や世界中から来た人々でキッチンやリビングをシェアするため、
トレッキングが大好きな者どうしのさまざまな交流が、自然と生まれます。

 

その中でも、とくに印象的だったのが、ピーター一家との出会い。
そのときのメモ書きから・・

 

カルガリーから来たピーターは、小さな女の子を連れていた。
もう、子供とバケーションを過ごすのが、嬉しくてしょうがないという感じで
文字通り目の中に入れても痛くないという雰囲気で子供の面倒をみている。
女の子の名前はローガン。アラスカのグレートマウンテンの名前だ。
引っ張るとカタカタと水かきが回るアヒルのおもちゃを引いて、
小屋の中を歩き回っている。
ピーターは得意そうに話した。
「彼女は、僕らがアラスカに住んでいたときに生まれたんだ。」
それから、ちょっと顔を曇らせて言った。
「でも、誕生日が9月11日。Bad dayなんだ」
数日間、小屋での生活を共にするうちに、僕らは親しく話すようになり、
ローガンは僕にお菓子も分けてくれた。
そして発つ日の朝、僕はピーターに、短い文章を贈った。

 

9月11日、僕たち人類はあまりに多くの、大切なものを失った
しかし、同じ9月11日、僕たち人類は、一つの大きな希望を授かった
その希望の名は、ローガン
彼女の笑顔は、見る者みんなを幸せにし
生きることの喜びを呼び覚ましてくれる
そして、その笑顔は、僕たちに大切なことを教えてくれる
この世界を、争いと憎しみの連鎖で、満たしてはいけないと
この笑顔を、僕たちのせいで奪ってはいけないと
そのために、まずお互いを知り、分かり合うことから始めよう
それが、僕たちにできること

 

正確に表現するために日本語で書き、そしてその場で英語で朗読してから、
彼に手渡した。
彼はじっと僕の目を見てうなずき、そして抱きしめた。・・・

 

世界の平和って、きっと小さなことの積み重ねで生まれるのかな、
と思っています。
少なくとも、温かな知り合いがいて、素晴らしい思い出のある国とは、
戦争をしようとは誰も思わないから。
お互いを、知ること。
一人一人の、人間としての顔が、思い浮かぶ関係になること。
それを可能にしてくれるのが、旅だと思っています。

 

【エコセン世話人 / 木風舎 代表 橋谷 晃】
(2019年10月30日配信 メルマガ掲載)