エコセン世話人のフィールドを訪ねる旅・第1弾~早春の房総・大房岬の千葉自然学校へ

始まりは、ガナゾーでした。

11月にエコセンの連載コラム「GO TO にっぽん」に登場したガナゾー。

執筆した千葉県の世話人神保清司さんが紹介する、千葉県立大房(たいぶさ)岬自然公園へ行ってみたくなりました。

(上空から見た大房岬。神保さん提供)

大房岬は、実は2019年9月に千葉県を襲った台風15号の被害を大きく受けた場所でもあります。

今年1月20日に開催した、RQ(※)とエコセンの共催オンライン座談会で、災害が起こったときに自然学校が果たせる役割について神保さんにお話していただいて、その可能性を強く感じたところでもありました。

今回エコセンでは、災害支援活動の視点からも普段から場所や人を知っておくこと、つながりを持つことが何より大事で、首都圏での地域のつながりをもっと深めたいと思い、世話人のフィールドを訪ねる旅を企画しました。そして、もちろんガナゾーがいる海を訪ねて、千葉の地のものを味わう目的も。

参加者は、エコセン事務局スタッフふたりと、共同代表ふたりとその家族、副代表の総勢7名でした。

川崎で車を借りて、アクアラインを通って木更津へ。あちこち寄り道をし、道の駅で食材を買い込み、神保さんがいる南房総市大房岬自然の家に着いたのは14時過ぎでした。この施設や公園全体を運営しているのは、神保さんが所属するNPO法人千葉自然学校です。

早速、公園内を案内していただきました。

特徴的だったのは、マテバシイの群生。2019年の台風の時に、根ごとひっくり返ったものもあったそうです。

コンクリートの建物を、ぐるぐる回って頂上に出ると目の前に青い海が広がりました。

 

北の方向にはるかビル群が望めます。北西の方向には三浦半島が。

公園内には、東京湾要塞(太平洋戦争の日本軍の基地の名残)の跡があちこちに残り、不思議な雰囲気を漂わせています。

 

(戦争遺跡を倉庫に活用しています)    (公園内にあるビジターセンター)

両生類の卵が産みつけられた池を眺め、一部ナラ枯れに襲われた森を歩いて芝生を横切って小さな滝を見に行きました。

海に太陽の光が反射していました。風が吹いていましたが、寒さはあまり感じませんでした。

 

それから、ガナゾーがいそうな崖下を望んで、自然の家に戻りました。

夕日が沈む前に、すぐ近くのリゾートホテルのお風呂に行って、星が瞬き始めた夜空を眺めながら暗い道を歩いて自然の家に帰ります。西の空に強い光を放つ星がふたつ、少し離れて輝いていました。金星と木星だと、アプリで調べてYさんが教えてくれました。

夕食は、食堂で、神保さんが用意してくれたイノシシ肉や鯵のお刺身、ごま鯖、ブロッコリーと菜花と併せて、自分たちで買っていった赤カブ、しいたけ、ホンビノス貝、小アジの干物(ジンタアジ)などを調理しました。

神保さんと一緒に、自然の家の若いスタッフも加わり、宴がはじまりました。

コロナが始まって3年間、大人数で食卓を囲むことがなかったので、本当に久しぶりの宴でした。

食事の場でハプニングが起こりました。炊飯器が壊れていて白米が十分に炊けていません。食べようとしましたが芯が残っていて、ぼそぼそしています。「どうしよう?」みんなで意見を出し合いました。「リゾットにしよう」「焼きおにぎりは?」「五平餅にすればいいじゃん」「五平餅!?どうやって作るの?」「簡単だよ」と言ったのは共同代表の中澤さん。五平餅は郷土料理で作り慣れている、ということで、急遽五平餅づくりが始まりました。一方、数年前にカフェを経営していた副代表は、刺身のつまを持って台所に消えていきました。五平餅チームがカセットコンロに網をセットして、ごはんを丸めたものを焼く傍らで、副代表は別のカセットコンロに置いたフライパンで何やら焼いています。適当な調味料を使ってたれを作ると、いも餅風チジミのできあがりでした。(カブの葉っぱもアクセントで使いました)五平餅の方も、共同代表の森さんが持参した信州味噌と自然学校にあった調味料、ちょうど食べていたおつまみナッツの中からくるみも拾って、合わせてたれを作りました。

焼いていた五平餅に割り箸を刺して、たれを塗って、美味しくいただきました。あるもので、工夫して、美味しく調理して食べきる。自然学校の神髄を見た気がしました。

その後神保さんと色々と話をしました。台風被害の話、残土埋め立ての問題、地元漁業者の話、海上保安庁のパトロールの話、磯焼けした海の話、ブルーカーボンの話、アマモ場再生の話・・・。

翌日は、大房岬と海をはさんでちょうど真南にある、館山市の沖ノ島へ。

沖ノ島は三方を海に囲まれていて、黒潮の影響を強く受けサンゴの北限域にもなっています。

神保さんに、沖ノ島を中心に自然体験プログラムや環境を守るための実践活動をしているNPO法人 たてやま・海辺の鑑定団の竹内さんを紹介していただきました。島の入り口でオリエンテーションを済ませ、いざ島へ。

 

砂浜には小さな貝殻などに混じって、プラスチックの破片も打ち上げられていました。

大房岬の崖もそうでしたが、沖ノ島でも地面から突き出た地層が斜めに傾いているのが特徴的です。

 

岩の穴に赤くて丸いものが付着しています。ウメボシイソギンチャクと言うそうです。浜辺で貝探しに夢中になりそうになりながら、先に進みます。島の西側から森の中に入っていきます。

実は、この島も2019年の台風の被害を大きく受けました。島を覆う木々が一部なぎ倒され、道を塞ぎ、神社のご神木まで無残な姿になりました。現在は、たてやま・海辺の鑑定団のみなさんが、自然の再生に取り組んでいるということでした。そして、この島にも戦争遺跡がありました。

 

島をたっぷり散策した後は、たてやま・海辺の鑑定団の事務所で近くのお店で買ったお弁当を食べて、団体のみなさんとお話をしました。地元の子供たちに、もっと館山の自然を知ってもらいたい、という言葉が印象に残っています。

ガナゾーには会えませんでしたが、東京湾の自然や戦争遺跡に触れ、自然を守り、自然の大切さを伝える活動をされている方々と出会い、台風被害からたくましくよみがえる森の強さを知った旅となりました。

この場を借りて、エコセンチームを受け入れてくださった神保さんと自然の家のみなさんにお礼を申し上げます。

 

一般社団法人RQ災害教育センター

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